第十四話 同じ父を持ちその三
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「私にはその資格がないですから」
「マイラ様もまた王家の方ですが」
「所詮は側室の子です」
嫡流ではなく、というのだ。
「それは誰もが言っていますね」
「私も太子も違いますが」
「それは私も知っていますが」
「他の者達はですか」
「この国の多くの者達は違います」
まさにというのだ、そしてマイラが今言っていることは真実でもあった。この国においては。
「やはり」
「マイラ様のことを」
「そう言っています」
側室の子だと、というのだ。
「この国ではこのことは大きいですね」
「それはそうですが」
「ならばあの娘とは違います」
父を同じくする者同士であろうともというのだ。
「ですから」
「お会いにはならませんか」
「どうしても」
これが最終的な決断だった。
「私の決断は変わらないですね」
「確かに」
時として意固地なまでにだ、一度決めた決断を変えることのないマイラのこの気質は司教もよく知っているものだ。彼女が幼い頃からの教師であるが故に。
だからだ、司教も知っているからこそ今は頷くしかなかった。
「それはもう」
「そうですね、では」
「それでは」
「この申し出はこれからも断ります」
その全てをというのだ。
「変えることはありません」
「わかりました」
「書を」
マイラはまた司教に言った。
「それを」
「では今より」
マイラは孤独の中で学問に励むことを選んだ、そして実際にマリーと会うことなく書を読んでいった。だが。
そのマイラを見てだ、司教は密かに太子と会いそのうえで彼に話した。
「マイラ様はマリー様とはです」
「やはりな」
その話を聞いてだ、太子はすぐにこう返した。
「そうなったか」
「予想されていましたか」
「司教程ではないが私もまた彼女を知っている」
それ故にというのだ。
「だからだ」
「左様ですか」
「妃は孤独を愛する」
「ご幼少の時からそうでした」
「そうだな、書を愛し頭もいいが」
「そのお心はです」
「常に閉ざされている」
マイラを理解しているからこその言葉だった、まさに。
「そうだな」
「どうしようもないまでに」
「私もわかった、彼女はだ」
マイラはというのだ。
「心を閉ざしだ」
「そのお心は」
「開かれることはない」
まさにというのだ。
「人に対してはな」
「神に対してのみですね」
「妃の心は開かれている」
「信じないという訳ではないですが」
「開かれてはいないな」
「どうしても」
「おかしな話だと思っている」
太子は少しだけ首を傾げさせそれから司教に言った。
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