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赤翔玄-剣を握りし果てに-
第0話 英雄の気質-この手に剣を強く握り締めて-
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よくやった」と皆に褒められている自分…………戻さずにはいられなかった。しかし、誰も俺の姿を見て笑う人間はいなかった。
 むしろ、「その歳でよくやっている」と褒められるくらいだった。

 ――大切な者を奪われない様に“なれろ”、“敵”と決めた相手を容赦なく絶対に斬れる様になれ。

 凄く乱暴な有り難い言葉を貰った事は今でも憶えている。でも、この時の俺はその意味を上手く理解する事は出来なかった。
 しかし、俺は直ぐに理解する事になった。
 後に“許昌の乱”と呼ばれる会稽郡の"宗教反乱者"である“許昌”が句章で反乱し、自らを“陽明皇帝”を名のり、彼女の娘の“許韶”とともにあたりの県を煽動したのだ。俺達は約千人程度の武勇に優れた者を募兵し、官軍の兵と協力し反乱軍を鎮圧した。結果は悪くない、むしろ、良かったくらいだ。
 しかし、俺個人の戦の内容は最悪も良い所だった。“宗教反乱者”……名前はどうであれ、敵は敵だ。なのに、俺は目の前で逃げ腰になって怯える非戦闘員は斬る必要もないと思って見逃した結果、懐に隠していた小刀を見逃し、大切な仲間を一人、無駄死にさせてしまった。当然、戦場報告の際にその事を伝えると頬を思いっきりぶん殴られて、人間ってこんなにも殴られて転がれるんだと思えるくらい強烈な奴を貰った。
 目が覚める以上に、本当に死ぬかと思った。でも、こんなに痛い思いをしても俺が無駄死にさせた大切な仲間は帰って来ない……俺は私兵になって初めて、ただ、辛くて泣いた。

 ――お前の甘さによって、一人の命を無駄にした。この事実は未来永劫、変える事は出来ない。だが、逆に言えば、たった一人の命で済んだんだ。嫌な言い方かも知れない、人の命を軽んじる言い方かも知れない……だが、数字上で見ればそう言う事になる。深く考えるな、お前が死んでしまった大切な人間達の代わりに必死に頑張れば良い。ただ、それだけだ。

 この日、俺は“江東の虎”の偉大さを改めて知った様な気がした。俺からしたら凄く有り難い言葉だけど、きっと、彼女からしたら、ちょっとした言葉を掛けただけなんだと思う。このちょっとした言葉を掛けられる人間がそう何人もいるとは思わない、部下の気配りも“英雄”になる一つの条件なんだろうか?
 この日より、俺は無謀にも大き過ぎる“江東の虎”の背中を追い、彼女の側近である四将……程普、黄蓋、韓当、祖茂の様に、将来は“偉大な英雄を支える柱”の一柱になりたいと思った。こんな事を皆の前で言えば、また、あの時の様に皆に馬鹿にされるかも知れない。でも、今ならどんなに馬鹿にされても前に進める気がするんだ。だって、俺、今さ、やりたい事を必死にやっているから――。





 庭の東屋から遠目に見える兵士達の調練姿。
 そして、東屋にいる一人の少女が調練する一人の兵士を指差
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