暁 〜小説投稿サイト〜
【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第一章 開業
第8話 リラクゼーションではなく、治療
[1/3]
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
絶叫が魔王城百階を支配する。
うるさすぎて施術に集中できなかった。
「魔王様、ちょっと声がエ……大きいので抑えていただけますと。こちらが集中できません」
「う……るさ……い」
魔王はうつ伏せのまま首を回し、やや赤みのある髪を乱しながらこちらを睨む。
「あの。布を噛んでいただくというのはどうでしょうか?」
魔王のマネージャーを称する人から変な助け舟が入り、布を噛んでもらうことになった。
彼女は最初抵抗を示したが、ここにいる一同の微妙な表情を確認すると、空気を読んで受け入れた。
「んぐぐ……んんん……ん――!」
うん。まあ、ちょっとはマシ、かな。
見ている限りでは、少し力が入りやすいタイプのようだ。
うつぶせのまま歯を食いしばったり、上を向いたりすると首や背中、腰がまた硬くなってしまう。
今せっかくゆるんできているので、それはもったいない。
ということで、肩と首は横向きでおこなうことにする。
「では横向きになってください」
「んぐぐぐ……」
なんと返事しているのかはわからないが、こちらの言う通りにはしてくれた。
頭上方向から肩上部を押圧する。
横向きの施術は、上から下に押せない。そのため、力が入りにくそうに見えるかもしれない。
しかし、自分の骨盤や太ももの内側を施術している腕のひじの後ろに当てると、体重や内転筋が使えるために比較的容易である。
「んん――!」
首筋にうつる。
胸鎖乳突筋――首の左右側面にある二本の筋――の緊張が強い。
この筋肉は首の側屈や回旋などに働く。魔王の座っている姿勢を考えれば、コリがたまっているのはうなずける。
この筋肉の施術効果は大きい。ゆるむと頭部が一気に軽くなる。
そして、この筋肉を刺激することで、迷走神経という副交感神経系の神経を同時に刺激することができるとされている。
副交感神経は体を休ませて回復させる神経である。
そのためリラックス効果が期待でき、またこの神経は内臓の多くを支配しているので、それらを調整する効果があるとも言われているのだ。
頸動脈が近いので慎重に施術。
「ふんんん――」
次は大胸筋と、その奥にある小胸筋だ。
魔王はそっくり返って座っている影響で、肩を前に出すことが多いだろうと予想する。
ゆるめて胸を解放する必要がある。
誤って乳房を触らないよう、鎖骨のすぐ下から慎重にゆるめていく。
「ふんんんんんっ――!!」
やっぱりうるせぇ……。
***
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫ですか? 魔王様」
施術が終わってフラフラしている魔王に、一応声をかける。
「……なんなんだ……
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ