第48話
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で押し切られることは明白。
だからこそ、窮鼠が猫を噛むかの如く、投石機にて一矢報いたかったが――
大炎の存在が、噛み付く事すら許さない。
「仕方ありません、ここは官渡まで下がり体勢を――「待って、稟」華琳様?」
「天は、私達に味方するみたいよ」
「……馬鹿な、ここまできて!」
怒鳴ったのは袁紹だ。さしもの彼も、体裁を忘れてソレに憤怒した。
雨だ。ぽつりぽつりと、小雨がその地全体に降り始めている。
「開戦したての時は快晴だったのに……!?」
「小船での攻略を始めた頃から、雲が厚くなりましたね〜」
「にしたって、こんな早く降り始めるなんて!」
「……」
袁紹が怒るのも当然だ。
犠牲を払いながらも、ようやく、本格的な攻勢に入れる段階に差し掛かったばかり。
だが、このまま強行すれば――
「後退を進言致します。雨脚が強くなれば河の増水は必至、橋は流され前線の兵が取り残されます!」
「ボクも後退に賛成よ。築き上げたものを崩すのは惜しいけど。兵達の命には代えられないわ」
「風は作戦進行を提案します〜」
「危険だわ!」
「だからこそ活路があるのですよ。幸い今は小雨、増水まで時間があります。
その間に魏軍を上回る戦力を送り込み、大橋と連動して攻撃を加えられるです〜」
「博打が過ぎるわ。止む可能性もあれば、予想外の豪雨になる可能性もあるのよ。
そうなれば、大橋での渡河も難しくなるわ」
「どちらを選択するにせよ、早急な決断が必要ね」
「…………」
選択を迫られた袁紹は、天を睨みつけるように見やる。
そのまま少し考え込み――やがて、溜息と共に力を抜いて、口を開いた。
「全ての兵を下げよ。念のため、陣も河から離せ」
『ハッ!』
袁紹の判断は正しかった。
陽軍が後退を完了させてから半刻後、凄まじい豪雨が降り注いだのだ。
河はあっという間に増水し、陽軍が作り上げた橋は、土台の小船ごと押し流された。
『……』
その光景を見て、陽軍は唖然としていた。
濁流に飲まれなかった安堵感。天災には成す術も無い無力感。
流した血が無駄に終わった徒労感。多種多様な感情が兵士達の間を駆け巡る。
無力感に苛まされながら後退して行く陽軍。そんな中、武官の一人が大河を挟んだ魏軍を見つめている。彼女は目をギラつかせ、口角を上げながら自陣に戻って行った。
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