暁 〜小説投稿サイト〜
恋姫†袁紹♂伝
第48話
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
魏軍は投石機を用いて大炎を封じようとした。それが今は、陽軍が大炎を用いて投石機に制限を掛けている。
 
 このまま放っておけば数に圧されて岸を制圧される。投石機を動かせば大炎が向かってくる。
 大炎のみを止めるのであれば、幾つか手段がある。しかし――

「……くっ」

 多では無く個に接近を許してもまずい。その身一つで勝敗を決定付ける規格外が居るのだ。
 郭嘉は大炎の先頭に居る、燃え盛るような赤毛を憎らしげに睨んだ。








「……スー」

「りょ、呂布殿ぉ。いくらなんでも居眠りはまずいのです!」

 色んな意味で熱い視線を受けているとは露とも知らず、恋は器用にも馬上で眠りこけていた。
 そんな彼女の背後に得物の柄が近づいていき―――軽く後頭部を打った。

「華雄殿!?」

「……イタイ」

「生きている証拠だ。私が敵であれば命は無いぞ?」

「殺気で……わかる」

「裏を返せば、殺気が無い流れ矢の類には対応できないと言うことか。柄で良かったな」

 恋を諌めたのは大炎の“副将”華雄だ。彼女と元華雄軍の精鋭三百人を新たに加え、大炎はさらに力を増した。

「…………シュン」

 ぐぅの音も出ない正論で言い負かされた恋は素直に反省。犬耳を垂れ下げた。
 華雄を副将に任命した理由の一つには、恋を将として律する目的もある。
 華雄は乱暴な言動に反して、将として規律を重んじる特徴があった。
 粗野な者とはそりが合わないと豪語する桂花でさえ、彼女の指揮には一目置いている。
  
 唯我独尊を地で行く恋には丁度いい副官だ。
 彼女が居れば個としてだけではなく、将としても成長を期待できるだろう。

「まぁ、恋の気持ちもわからんでもない」

 言って、前線に目を向ける華雄。その目は貪欲に光っている。
 攻撃こそが最大の防御とする彼女のことだ。頭でわかっていても、威圧の為に待機するのはもどかしいのだろう。
 馬上にも関わらず、器用に貧乏揺すりをしているのがいい証拠だ。

「それにしても、何て数の船だ」

「主殿を含め、ねね達はこの地での戦を想定していたのです。
 数は少ないですが、中型の用意もあるのですぞ」

 対岸という地の利に対して、陽軍は軍資金に糸目をつけず船を製造、輸送していた。
 数千という数を動かすだけでも莫大な費用が掛かる。大河での戦闘が無ければ骨折り損だ。
 にも関わらず、迷う事無く持って行く事を決定した。
 
 潤沢な軍資金を持つ袁陽だからこそ、出来る準備である。

「……時が進むにつれ、岸での戦闘は魏軍が優位になったな」

「はい、将兵の使い方が上手いのです」

 河から魏軍側の陸にかけて、人ひとり分の段差がある。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ