第48話
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魏軍は投石機を用いて大炎を封じようとした。それが今は、陽軍が大炎を用いて投石機に制限を掛けている。
このまま放っておけば数に圧されて岸を制圧される。投石機を動かせば大炎が向かってくる。
大炎のみを止めるのであれば、幾つか手段がある。しかし――
「……くっ」
多では無く個に接近を許してもまずい。その身一つで勝敗を決定付ける規格外が居るのだ。
郭嘉は大炎の先頭に居る、燃え盛るような赤毛を憎らしげに睨んだ。
「……スー」
「りょ、呂布殿ぉ。いくらなんでも居眠りはまずいのです!」
色んな意味で熱い視線を受けているとは露とも知らず、恋は器用にも馬上で眠りこけていた。
そんな彼女の背後に得物の柄が近づいていき―――軽く後頭部を打った。
「華雄殿!?」
「……イタイ」
「生きている証拠だ。私が敵であれば命は無いぞ?」
「殺気で……わかる」
「裏を返せば、殺気が無い流れ矢の類には対応できないと言うことか。柄で良かったな」
恋を諌めたのは大炎の“副将”華雄だ。彼女と元華雄軍の精鋭三百人を新たに加え、大炎はさらに力を増した。
「…………シュン」
ぐぅの音も出ない正論で言い負かされた恋は素直に反省。犬耳を垂れ下げた。
華雄を副将に任命した理由の一つには、恋を将として律する目的もある。
華雄は乱暴な言動に反して、将として規律を重んじる特徴があった。
粗野な者とはそりが合わないと豪語する桂花でさえ、彼女の指揮には一目置いている。
唯我独尊を地で行く恋には丁度いい副官だ。
彼女が居れば個としてだけではなく、将としても成長を期待できるだろう。
「まぁ、恋の気持ちもわからんでもない」
言って、前線に目を向ける華雄。その目は貪欲に光っている。
攻撃こそが最大の防御とする彼女のことだ。頭でわかっていても、威圧の為に待機するのはもどかしいのだろう。
馬上にも関わらず、器用に貧乏揺すりをしているのがいい証拠だ。
「それにしても、何て数の船だ」
「主殿を含め、ねね達はこの地での戦を想定していたのです。
数は少ないですが、中型の用意もあるのですぞ」
対岸という地の利に対して、陽軍は軍資金に糸目をつけず船を製造、輸送していた。
数千という数を動かすだけでも莫大な費用が掛かる。大河での戦闘が無ければ骨折り損だ。
にも関わらず、迷う事無く持って行く事を決定した。
潤沢な軍資金を持つ袁陽だからこそ、出来る準備である。
「……時が進むにつれ、岸での戦闘は魏軍が優位になったな」
「はい、将兵の使い方が上手いのです」
河から魏軍側の陸にかけて、人ひとり分の段差がある。
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