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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第一章 開業
第1話 赤黒い目
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言えば自称天才である。そして私は稀代の人間研究家と言われており、魔国のために日々人間の研究に励んでいる。齢は二十八歳。好物は最近人間が開発したというカップスープであり――」
この自称天才を自称する人は、本当に思いついたことを、思いついた順に全部言いそうだった。
たまらず遮った。
「あの、すみません。詳しい自己紹介の前に、まずここがどこなのかというところから教えてほしいんですが」
「む? 少年よ、お前は記憶喪失なのか?」
「いえ、そうじゃないんですが、どうも違う世界から飛ばされたような感じで」
「ほう……? 何かわけありのようだな。いいだろう」
ルーカスの説明が始まった。
たぶんこの人、頭は良いのだろう――それはなんとなくわかったのだが。
話の脱線が多いし、ちょこちょこメイド長と掛け合いが始まって中断するなど、お世辞にも流れがよいとは言えなかった。
正直、今の精神状態で聞くのは少ししんどかった。
とりあえず聞いた話を簡単にまとめると、ここはクローシアという名の大陸。
今いるこの国は魔国ミンデアというらしく、魔族の国らしい。
そしてこの屋敷があるのはレンドルフという村だそうだ。
ぼくが捕まったのは、この村から一日ほど西にいったところにある塩湖の跡地。
ルーカスは「人間の書物によれば内陸性塩湖の塩は独特の風味で……」などと意味不明なことを言っていた。個人的な趣味で塩を採取していたところだったようだ。
いきなり知らない固有名詞ばかり言われても覚えられる気がしなかったが、異世界に来てしまったということは、これでどうやら確定だ。
意外と、そのこと自体にはショックがなかった。
やはりそうなのか――そう思っただけだ。
ルーカスやその部下たちの赤黒い目、そしてその醸し出す異質な雰囲気。それである程度覚悟ができてしまっていたからだろうか。
それとも、もうあっちの世界では詰んでいたと思っていたので未練がないからだろうか。
どちらなのかはよくわからなかった。
それよりも、いきなり魔族の奴隷になるという流れのほうがショックだ。
あの転送屋のお婆さん、転送先は指定できなかったのだろうか。
どうせなら人間の国に飛ばしてほしかった。
この先、どうなってしまうのだろう。
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