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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
序章 プロローグ
第0話 活躍の場を求めて
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どうしてもこの仕事がやりたかったのに」

 小さい頃に、家族に頼まれてマッサージをやったことが始まりだったと思う。
 もちろん当時は知識も技術もない。でも、自分が触ることでまわりの人が笑顔になることが嬉しかった。

 手技で人を治療する仕事がしたい――物心ついたときには、それが夢になっていた。だからこそ、高校を卒業してすぐに専門学校に行き、三年の時間と四百万円の学費をかけて国家資格を取得したのだ。
 転職など考えたこともない。

「そうなのでございますか」
「あとぼく二十一歳だからね? 童顔らしいからよく間違えられるけど」

 丸顔なのもあるだろうし、固めていないショートの黒髪、あとは目も少しパッチリらしいので、それらも合わさってそう見えるのかもしれない。
 若く見られるのは嫌ではないが、貫録もないということになる。
 仕事上はややマイナスに働いている気がしないでもない。

「それは失礼いたしました。では別の道もありえないのですな」
「うん。もうどうしていいのかわからないんだ。ああ、もっとサクッと環境が変わってくれればなあ」

「ほほう。サクッとですか。しかしそれは少し安易ではございませんか? 世の中うまくいかない人なんて沢山いるでしょうに」
「安易だっていい。活躍できる場所が欲しい」

 投げやりな感じでそう答えると、老婆の眼光が鋭くなった気がした。

「ほう……おっしゃいましたな」

「え?」

 疑問の声には答えず、老婆は水晶を見た。

「あなた、ご両親はもういらっしゃらないので?」
「ん? そこまでわかっちゃうんだ? たしかに親はいろいろあってもういないね」

「では転送させていただきます。戻れませぬので現地で後悔のなきようご活躍なさいませ」
「え? どういうこと?」

 老婆はそう言うと、水晶の上に両手をかざした。

 ぼくはその水晶の中に頭から吸い込まれていった。
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