十八話:河川敷の決闘
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ぐだ男は剣など握ったことがない。
故に剣の振り方など分からないし、足捌きも知らない。
彼が漫画の主人公であれば天賦の才や、覚醒の言葉だけで互角に戦えるようになるだろう。
しかし、彼は普通だ。どこまでいっても天才には敵わない。
ましてや究極の一を極めた存在に善戦するなど不可能だ。
「甘いッ!」
『つぅッ!?』
馬鹿正直に振り上げた剣など目もくれられず脇腹を激しく打ち付けられ吹き飛ばされる。
痛みから反射的に唾液と一緒にこみ上げた痰を吐き出す。
「もう終わりですか? あなたの気持ちはその程度ですか!」
『まだまだ行ける…!』
睨み付けてくるジルの啖呵に答えるように痛む体を起き上がらせる。
相手は決して自分からは仕掛けてこない。
それは初心者に対する配慮のようなものであり、圧倒的な自信からであった。
初心者と上級者が争えば何もすることができずに初心者が負けるのが当然だ。
それは歴然たる事実。これがもし戦争であれば如何なる手を使ってでも勝てばいいのだろう。
しかし、これは決闘だ。小細工は無用、そもそもしようがない。
故に真っ向から馬鹿正直にぶつかり合うしか道がない。
『いくぞぉッ!!』
今度は突きに変えて一直線に突っ込む。
「そんな手が通用するとでも?」
だが、あっさりと剣を跳ね上げられ、返す刀に横からの一撃を叩き込まれ吹き飛ばされる。
経験に裏付けされた圧倒的な力量の差。
端的に言おう。ぐだ男が勝つのは―――不可能だ。
『次は…当てる!』
「いいえ、決して当たりません」
それでもぐだ男は立ち上がり彼に立ち向かっていく。
そして、今までと全く同じように無残に地面に転がさられる。
何度地面に這いつくばったのか、ふとそんなことを思うがすぐに乾いた笑いを零す。
10を超えたあたりからもはや覚えてなどいない。
ひょっとするとすでに50回以上打ち倒されているかもしれない。
しかし、それがどうしたというのだ。
四肢に力を込めて立ち上がり、やせ我慢で強気な笑みを浮かべる。
「……何度やろうと結果は同じです」
『まだまだ…これからぁッ!』
何度でも這い上がり、何度でも立ち向かう。
それしか知らないし、それしかできない。
ただ、自分にできることを愚直に行い続けていくだけである。
「ハッ!」
『ぐうぅ…まだ…だ』
顎を砕くような凶悪な一撃が決まってもぐだ男は再び挑みかかる。
だとしても届かない。まるで最果ての海に挑むように自身の剣が届く気がしない。
運よく相手の懐に自らの獲物が入り込んだかと思えば次の瞬間には弾かれる。
隙などなく、万に一つも勝ち目はない。
「これ
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