十八話:河川敷の決闘
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で、おしまいです!!」
ふらつく姿にここで終わらさなければ流石に不味いと判断したジルが大きく剣を振り上げる。
ぐだ男の目にはその動きが映るが避けることも防ぐこともできない。
それを十二分に理解したうえでジルは容赦なくその体に剣撃を打ち込む。
『ぐぁああ…ッ!』
「……やりすぎてしまったでしょうか」
ボロ雑巾のようになりながら地面に横たわるぐだ男の姿に罪悪感を抱く。
もとよりこれは彼の覚悟を見極めるためのもの。
彼本人に対しては悪感情はないのだ。
だが、しかし。そのような気遣いは全くもって必要でなかった。
『…まだ…まだ……やれる…』
「まだ、立ち上がりますか…ッ」
剣を支えにして再び立ち上がるぐだ男の姿にジルは目を見開く。
根性がある少年だとは思っていたがここまでとは予想だにしていなかった。
勝つことが不可能だというのはぐだ男自身が一番よく分かっているはずだ。
それなのに、なぜ立ち上がることができるのか。
「…ッ! いいでしょう。その気持ちに敬意を表して私も最後まで付き合いましょう!」
一瞬、ぐだ男の気迫に怖気づきそうになった自分を奮い立たせるようにジルは叫ぶ。
相手はその言葉に傷だらけになった顔で強気に唇を吊り上げてみせる。
まるで届かぬからこそ挑むのだとでも言わんばかりに。
『勝負は……これからだ…!』
「何度でも…! 何度でも叩き伏せましょう!」
言葉通りに二人の剣は戦いを再開する。
ぐだ男にはもはや剣を鋭く振れるような力は残っていない。
しかし、それでもジルは手加減などせずに何度も、何度も彼を吹き飛ばしていく。
だが、その度に彼は立ち上がる。とっくに限界を迎えているというのに大地を踏みしめる。
『この…程度……まだ…だ』
まるでゾンビのように何度でも起き上がるぐだ男。
勝っているのは自分だ。負けているのは相手。
だというのに、ジルはまるで自分が追い詰められているような錯覚に陥る。
目の前の存在が同じ人間に思えなくなった。恥ずべきことに彼は恐怖した。
しかし、それはすぐに彼の中で敬意へと変化した。
「不可能に挑み続けるその姿勢…! 尊敬に値します!」
越えられない壁に挑み続ける精神性は誰もが持っているものではない。
みな、諦めたり、回り道をしようとしたり、穴を掘ったりと正面から越えることを諦める。
だが、この少年は馬鹿正直に目の前の壁を乗り越えようとしている。
普通であるがゆえに壁を砕くような爆発力もない。
ただ、己の根性だけで壁に手をかけ、足をかけ爪が剥がれても噛り付いている。
その在り方はジルから見て非常に敬意を持てるものであった。
「痛みも恐怖も感じぬ
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