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立ち上がる猛牛
第五話 主砲とストッパーその五
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重な勝ち越し点だ、もう九回に近鉄が得点を得る力はない、これで勝負は決まったと誰もが思った。
 だがこの時だった、センターの平野が。
 ボールに猛然と突撃しボールをグラブに収め駆ける勢いのままに。
「させるかあっ!」
 この負けたくなかった、最後の最後で負けるのはもう沢山だった。プレーオフでも後期最終戦でもそうだった。 
 死ぬ様な練習をしてきた、全ては優勝の為に。平野はここで諦めたくはなかった。
 それでだ、ボールをセンターに向かって投げた、この一球に全てを駆けた。平野は渾身の力でホームにいる梨田に投げた。
 ボールは凄まじい速さでホームに向かった、そのまま梨田のミットに収まり。
 梨田はそのミットでホームに突っ込んできた定岡にタッチした、まさにホームでのクロスプレーだった。定岡はホームに突っ込んだ。その判定は。 
 誰もが固唾を飲んだ、アウトかセーフか。誰もが主審の声を待った。
 主審の手がゆっくりと動いた、その手の動きと声は。
「アウト!」
 この瞬間大阪球場を歓声が包んだ、誰もが一点が入ったと思ったが平野はそれをすんでのところで止めたのだ。
 このバックホームが試合を決めた、九回は双方共点を入れられず引き分けとなった。この瞬間近鉄の前期優勝が決まり花吹雪が舞った。
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