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真田十勇士
巻ノ五十七 前田利家その四

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「行ってらっしゃいませ」
「そして昼をお楽しみ下さい」
「ではな」
 幸村も彼等に応える、そしてだった。
 昼に二人で歳家のところに来た、丁度休憩の時で前田家の者達は整然と集まって飯を食っていた。その前田家の軍勢の状況を見てだ。
 幸村は信之にだ、こう言った。
「流石ですな」
「うむ、見事じゃな」
 信之もこう応える。
「関白様の古くからのご盟友でありな」
「多くの戦場で戦ってこられただけはあり」
「こうした時もじゃ」
「何時でも戦える様にしてありますな」
「戦は寝てる時と飯を食う時が危うい」
 この二つの時が最もというのだ。
「一番隙が出来るからな」
「はい、どうしても」
「しかしじゃ」
「こうしてそうした時も整然としれおれば」
「敵が来てもな」
 それでもというのだ。
「すぐに戦える」
「だからですな」
「前田殿も備えておられるのじゃ」
「既に」
「流石は天下の名将じゃ」
 幾多の戦を生きてきた、というのだ。
「それだけはある」
「全くですな」
「ではじゃ」
 信之はさらに言った。
「我等もこのことはな」
「見習うべきですな」
「見習うべきものは見習い」
 そしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「よりよき軍勢にすべきですね」
「飯の時と寝る時こそ用心する」
 人として必要なその時にというのだ。
「そういうことじゃな」
「ですな、まことに」
「前田殿はよくわかっておられる」
「我等もそれを取り入れ」
「戦にかかろうぞ」
 こうした話をしながらだった、二人は利家のところに来た。彼は奥村と前田家の主な将帥達と共に飯を食おうとしていた。
 それでだ、利家は二人を見て言った。
「来てくれたか」
「はい、参上致しました」
「それなら」
「うむ、それではな」
「これからですな」
「飯を」
「待っておった」
 まさにという返事だった。
「それではな」
「はい」
 二人で応えてだ、そしてだった。 
 利家は二人の場所を空けさせてそこにそれぞれ迎え入れてだった。二人にも飯を出してそれで食いはじめた。
 飯は白米を炊いたものだった、利家はその飯を頬張りつつ二人に声をかけた。
「美味いか」
「はい、やはりです」
「白米はよいですな」
「こうした戦の時はです」
「白米の方が炊きやすいですし」
「そうじゃ、それでこうした時はな」
 出陣の時はというのだ。
「炊かせておるのじゃ、しかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「いつも白米を食っておる訳ではない」
 利家はこのことは断った。
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