―決戦前夜―
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「よう、遊矢」
「三沢……」
深夜のアカデミア。夜中は出歩いては行けないという校則があった気がするが、もはや公然の秘密と化しているそれに構わず、アカデミアをブラブラしていると。白衣を着た三沢に偶然会うと、久々だというのにフレンドリーに話しかけてきた。
「どうしたんだ? こんな夜に」
「何があっても、もうすぐこことはお別れだからな。また回りたくもなる」
「そうか……そうだな。俺も似たようなものだ」
俺は久々だから見て回っていたがな――と、三沢は苦笑する。先日、異世界からアカデミアに帰還した三沢が提示してきたのは、ダークネスへの反撃をする方法。すなわち、こちらの世界に侵攻されてばかりではなく、ダークネスの世界に打って出る計画だった。
「あとは見回りも兼ねてだな。今更、ダークネスの侵攻で失敗しました、なんて笑えない」
「……まあ、来ないだろうけどな」
ダークネスの世界への反撃は、明日にでも始められるほどに、着実に準備が進んでいた。とはいえダークネスが妨害してくるタイミングは、恐らくは反撃を開始する時という、最も油断するタイミングに他ならないだろう。
――明日は、決戦になる。
「それが分かっているなら安心だな。さて、俺は次元移動施設に戻るが、遊矢はどうする?」
「俺はもう少し、見て回ってるよ」
ダークネスがいるのは異なる次元。俺たちが散々苦しめられた、次元移動が反撃のために必要になるとは皮肉だが、今はそれに頼るほかない。異世界から帰還したと言っても、まるで変わらぬ三沢に内心で安心しながら、次元移動施設があるところまでは共に行こうとしようとするが。
「遊矢。これは独り言なんだが……さっき偶然、明日香くんにも会ってな。灯台の方に行くと言っていたぞ。お前も、行くところがあるんじゃないか?」
「……余計なお世話だ!」
――前言撤回。どうやら異世界の経験を活かして、三沢も少し強かになったらしい。こちらの抗議にも大人の笑みを見せる三沢と別れて、俺は灯台に向かって行った。
「明日香!」
「……遊矢?」
そして少しの時間経過の後に、アカデミアの極東である灯台の下へとたどり着いた。灯台は光を周りに照らし続けており、灯台下暗しという言葉が嘘のように、灯台の下にいる明日香を照らしているように見えた。
「どうしたの……って、あなたも見回りよね?」
「ああ。明日香は……何でここに?」
「ここは……色々、お世話になったから。兄さんの件でね」
明日香が灯台に手を触れて、思い出すように声を出す。吹雪さんがダークネスに囚われていた時、明日香はよくここに足を運んでいたらしい。それは亮も同様であり、何か吹雪さんとの思い出の地なのだと伺わせる。
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