第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#22
DARK BLUE MOONXIV〜Braze Blood〜
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【1】
どれほど、時間が経っていたのだろう。
永遠のような、一瞬のような気もした。
静寂と共に傍らを駆け抜ける風。
目の前で燃え盛る惨劇の墓標。
最愛の者の亡骸を抱きながら、この世の果てに、
たった独りで立っているような気がした。
「……神様……なんて……いない……いない……のよ……ルルゥ……」
僅かな温もりを腕の中に残す少女に、嗄れた声で問いかけた。
何度も何度もそうすれば、また彼女が優しく語りかけてくれると想った。
「“もしいるのなら” ……なんで……なん……で……」
彼女に託されたロザリオを、血が滴るほど強く掴んだ。
あれほど頼んだのに、あれほど祈ったのに――!
何の罪もない善良な少女一人すら救ってくれなかった
『その存在』 を握り潰すように。
「なんでアンタが死ななきゃいけないのよ!! なんでこんな私が生きてるのよッッ!!」
頬を流れる紅涙と共に、堪えきれない慟哭を月に吼えた。
(“アンタ” は……裏切った……!
『私じゃなくてルルゥを裏切った……!』
どんなに辛くても……苦しくても……!
「正しく」生きてさえいれば……いつか “アンタ” が救ってくれると……
この娘は死ぬその直前まで信じてたのに……ッ!)
怒りと哀しみで軋り続ける輪郭と共に月を呪った。
この世界を遍く光で照らす絶対的な存在。
その光を少しで良い、ほんの少しだけで良いから、この娘に分け与えて欲しかった。
何もしてくれない “アンタ” の代わりに、この娘はその優しい心で、
たくさんの人々を温かく照らしてくれたのだから。
その彼女を救ってくれなかった存在が赦せなかった。
護れなかった自分はそれ以上に赦せなかった。
「殺……して……」
精神がバラバラに引き裂かれるほどの凄まじい憎しみと絶望に、
自虐的な衝動が抑えがたく湧き上がってきた。
「私も……殺して……よ……もう……生きてたって……しょうがない……
本当にもう……なんにも……残って……ない……」
譫言のように繰り返しながら、彼女の亡骸を抱き続けた。
この娘が笑ってくれさえすれば、他には本当に何もいらなかった。
「殺して!! 殺しなさいよッッ!!」
届かない言葉とは知っていても、この娘が哀しむと解っていても、
それでも叫ぶのを止められなかった。
「ルルゥを……返して……! 返して……返して……よ……」
ただもう一度、ルルゥに逢いたいだけだった。
『じゃあ、死ねよ』
絶望に打ち拉がれ彼女の亡骸に縋り付いた時、
“ソイツ” の声が、頭上から響いた。
眼前で燃え盛る娼館の中から、赤い災厄のように飛び出したソレは、
纏った甲冑の至る所から白い焼煙を噴き
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