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第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#22
DARK BLUE MOONXIV〜Braze Blood〜
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はその男を知っていたのか怯えながら嘲るような奇声を発し、
耳障りな金属音を残し夜の闇に姿を消した。
 後に残されたのはその男と死よりも辛い絶望に打ちのめされた自分、
そして、最愛の者の亡骸。
 その自分達の傍らに、細い外貌とは裏腹の重厚な装飾に身を包んだ男が
足音を全く発さずに歩み寄った。
「娘? 力が欲しいか? 万物を(ことごと) く敲き潰し、
自分(テメー)の気に入らねぇモン根刮ぎ咬み千切る、圧倒的で絶大な力が」
 愚問だった。
 だから、答える事はせずその人間ではない男の眼だけを貫くように見つめ返した。
「ハッ……良い答えだ」
 名も知らぬその男は一度満足げにその牙のような瞳を歪め、
自分に向けて手を差し伸べた。
 その瞬間、突如男の背後から、莫大な群青の炎が凄まじい勢いで噴出した。
 無情なる月光の許で波濤の如く渦巻くソレは、
巨大なる狼の形容を伴って己の瞳に映った。
「なら、この手を取れ、娘。
オレは紅世の王 “蹂躙の爪牙” マルコシアス。
テメーらで勝手に決めやがったいけすかねぇ 「規律」 や
クソみてぇな 「秩序」 を押し付け、
意のままに操ろうとしやがる屑共を、一匹残らずブチ殺そうぜ」
 そう言って男は、形の整った皓歯(きゅうし) を剥き出しにして嗤った。
「おまえとなら、退屈せずに済みそうだ」
 是も非もなかった。
 微塵の躊躇もなく、自分はその手を取った。
 マルコシアスと名乗るその男が、悪魔だろうが邪神の遣いだろうが構わなかった。
『もう二度と自分達のような存在を生み出さない』 
 ソレが、アノ娘と交わした最後の 『約束』 のような気がした。
 手を掴んだ瞬間、男の姿は陽炎のように立ち消え、
代わりに不可思議な紋章と紋字が狂暴に煌めきながら自分を取り巻き、
背後で渦巻いていた群青の炎が濁流のように裡へと入り込んできた。
 総身を覆い尽くす、決定的な喪失感。
 消えて、いく。
 跡形もなく、焼き払われていく。
「人間」 であった、今までのスベテが。
 まるで、一つの悪い夢だったかのように。
 でもその中に、確かに残る存在。
 呑み込まれそして自分の裡から新たに湧き熾る群青の炎の中に、
掛け替えのない最愛の者が浮かび上がった。
 その翳りのない笑顔と共に、蒼き炎に包まれながら、彼女は清らかに葬送されていく。
 あどけない、少女の姿のまま。
 スベテが 『そうなるべきところに』 還っていく。
 死しても尚、渦巻く炎の中でも、絶えるコトのない神聖な気配。
 この娘は、本当に 『天使』 だった。
 羽根はないけれど、自分にとっては、紛う事無き本物の 『天使』 だった。
 だからせめて、その想い出を胸に……




“さよなら。ルルゥ” 

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