第六海
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川上が紙を一枚めっくってあらわれたのは『改有間型駆逐艦改装図』と書かれていた。
改有間型、つまりは綾川型のことを指している。
有間型の中でもかなりの改装を繰り返してきた綾川型はその先の改装はないものだと思われてきた。
そんななか、川上が提示した設計図はさらなる改装が記されていたのだ。
川上が持つ設計図を見た綾川は川上を見るのをやめて、反対を向いて執務室から出て行こうとした。
この設計図の存在は綾川たちにとってはいいことなのだが、綾川は改有間型というところに反応してしまったのだ。
「ちょっと待ちなさいよ!」
満潮が止めにかかるがお構いなしに出ていく綾川。
入ってくるときも自由に入ってきて、出ていくときも自由に出ていく。
なんていうか子供である。
「川上ちゃん、どうして持ち出して来ちゃったのですか?」
設計図は本来、大本営が管理して、必要な際は各鎮守府に貸し出すシステムなのだが、それを無断で持ち出していることは、それだけで軍規違反なのである。
「でも、本物じゃないよ」
本物ではない?
細部までは見てなかったのですが、それでも大本営の印があると言うことはそういうことのはずです。
「少し話を聞いてくれる?」
これは今から一年半くらい前だったはず。
横須賀鎮守府近海海域において、戦艦ル級三隻との戦闘があった。
そのときは運が悪くも、主力艦隊が大平洋中央海域に攻撃を仕掛けているときであったため、横須賀鎮守府には予備艦数隻と修理中の艦しか残っていなかった。
そこで有間ねぇは仕方がなく出撃を指揮していたの。
第一艦隊は有間ねぇ率いる有間型駆逐艦四隻と鴻型水雷艇、そして第二艦隊は私が率いたんだよ。
その時綾川は、その戦いに参加できなかった。
私は綾川ねぇさん以外の改有間型を率いて戦闘海域に向かったらしい。
当初の予定では第一艦隊が正面にて、敵艦隊の注意を引き付けている間に、第二艦隊が後方に回り込み挟み撃ちにする予定だったのだが、有間ねぇたち第一艦隊は第二艦隊到着前に緊急離脱処置をとって海域を離脱したんだ。
その知らせを知らなかった第二艦隊はそのまま後方に侵攻。
でも、第二艦隊は第一艦隊が攻撃しているものだと勘違いし、敵艦隊に攻撃を開始したところ戦艦ル級に発見され集中砲火をくらい、艦隊の大部分は機関停止、航行不能になるほどの大打撃を受けたの。
でも滑沢ちゃんや銚子ちゃんたちは私の指揮を無視して突っ込んでいったの。
私たち第二艦隊を逃がすために。
私は前線指揮を滑沢ちゃんに移換して後退、帰投を開始した主力機動部隊に救援要請をしたんだけど、間に合わなかった。
横須賀鎮守府では伊58を含む潜水艦隊にて捜索を行いましたが発見には至りませんでした。
その結果翌日に横須賀鎮
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