第6章 流されて異界
第150話 その火を……飛び越えるのか?
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恋も知らず、愛も識らず、心を持たない道具として使い続けられた数百年。ただひたすら涼宮ハルヒの観察と、名づけざられし者の関心を買う為に費やされた時間が彼女に何をもたらせたのか。……正直、俺なら途中で発狂していた事でしょう。
おそらく、人生経験に関してはどっこいそっこい。知識に関しては魔法関係なら、俺と出逢うまでの有希は、その手の知識から敢えて遠ざけられて居た雰囲気があるので俺の方が上。その他に関して言うのなら、一度見た物、触れた物を決して忘れる事のない彼女の方が上だと思う。
そう言う相手に対するにしては、少し失礼かも知れない口調……彼女の見た目が自分よりも幼く見える事により、自然と諭すような、かなり優しげな口調で話し掛ける俺。
そう、確かに変化系の術を俺は得意としていないが、それはおそらく俺が常態的に人型に変化を行っている龍だから。龍に取って人間の姿で居る事は非常に無理を伴う行為であり、故に人間の姿でいる龍の寿命は本来の龍としての寿命などではなく、人間の平均的な寿命となって仕舞う、と言う説もある。つまり、俺の心の奥深くにある人間以外の姿へと変わる事への恐れが、俺に変化の術……例えば三面六臂などの系統の術の取得を不可能な状態にしている可能性がある。……と言う事。普通の仙人ならば、少なくとも自分の見た目ぐらいなら、触られたとしてもバレない程度には簡単に変える事は出来ると思う。
そして、今の有希ならば、その程度の術の行使が出来る可能性はある。
「……それならば何故」
他に誰か心に秘めた相手が……。現実に発せられた言葉の外にそう言う意味が込められている事がありありと分かる問い掛け。
その言葉の中。そして、彼女の瞳の奥。表面上からは絶対に分からないような、かなり深い部分にある種の期待に近い色を浮かべて。
ただ……。
ただ、成るほど、そう感じたか。ハルケギニアに残して来た女性が居る、と話した事が彼女に与えた影響と言うのは、俺が考えて居る以上に大きかったのかもしれない。
今の彼女が発して居る期待に近い感情の意味は分からない。多分、今、俺が持っている情報からは推測出来ない、何か彼女の心の奥に秘めた感情の発露なのでしょうが……。
しかし――
「多分、今の処、そんな相手はいない」
据え膳喰わぬは何とやら、と言うが、俺の立場でそれを言い訳にすれば、それは単に節操がないだけの軽佻浮薄な輩と成り果てて仕舞う……と思う。
但し、彼女への気持ちは多分、それ……いないと言い切った存在に近い。それは分かっていながらも、その部分を今は押し殺す。
「有希――」
それまで、異常に近い位置に居ながらも、決して交わらせる事のなかった視線を合わせる俺。本当は話したく
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