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豹頭王異伝
新風
後催眠の術
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イシュタールに送ったのだが。
 援軍を要請する密書を持たせたが、到着する以前に暗殺された。
 通常の伝令も数10人、派遣したが全て竜王に消されてしまったらしい。
 1人でも多くの魔道師が要る為、イシュトへの伝令は諦めざるを得なかったのだよ。
 私は奪回した古代機械で治療を受け、3昼夜に渡り意識を喪っていた。

 ヴァレリウスも結界を張る為に全精力を注ぎ、他の事まで気が廻らなくてね。
 マルガに残る者達は事情を知らず、そなたの使者に返事を出来なかった様だ。
 余計な心労を掛けてしまって本当にすまない、私とそなたは運命共同体だからね。
 一刻も早く謝りたくて、閉じた空間の術で飛んで来たのだよ」
 パロ魔道師軍団の暫定指揮官は堪らず、心話で百万言の文句を並べ立てるが。
 灰色の眼を瞑り荒れ狂う感情を懸命に鎮め、ゴーラ王の思念波を探査。

「ナリス様、あんたにはイシュタールに来てもらう。
 古代機械も一緒だ、文句は言わせねぇ」
 ナリス、ヴァレリウス、マルコは驚き、一斉にイシュトヴァーンを凝視。
 苦痛に歪む表情、無機質な据わった瞳が観察者達に真相を暴露。

「ヴァレリウス、魔の胞子は植え込まれていないか?」
 元ドール教団の最高導師、ドールに追われる男イェライシャ直伝の魔道検査。
 対象を透過し内面を走査する雷帝の術、電子風と同様に光る胞子の術を投射。
 緑色の黴を髣髴とさせる異次元の微生物、魔の胞子を輝かせる波紋が僭王を包む。
 共鳴作用を示す異次元の色彩、発光現象は励起せず術者は無念そうに首を振った。

「残念至極、不愉快極まりありませんが其の様ですね。
 光る胞子の術で透視してみましたが、反応は皆無です。
 能面の様な表情と念波の乱れ具合から判断すると、後催眠の術ですかね。
 有難い事に竜王も単なる棄て駒としか見なかった様で、気配は感じられません」
 ナリスは安堵の溜息を吐き硬直する側近、マルコに気の毒そうな視線を投げた。
 自業自得と言わんばかりに肩を聳やかす魔道師を一瞥、沈黙を命じ口を開く。

「キタイの催眠術に操られている様だが、解放する為に事前準備が要る。
 今直ぐに魔道を解けば生命に関わる可能性もあるから一旦、撤収するとしよう。
 イシュトには何も言わぬ様にね、本人には何の記憶も残っていないのだから。
 今度は確実に解放する準備を整えて再訪するからね、心配は要らないよ」
 魔道の類に親しまず、困惑の色を湛える海の兄弟に異状の原因を説明。
 カメロンの信頼する元水夫長も、確信を持つ相手に委ねた方が賢明と悟る。
 深々と頭を下げるマルコに優しく頷き、闇と炎の王子は閉じた空間の中に姿を消した。
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