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豹頭王異伝
新風
後催眠の術
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で見守る元魔道師宰相。
 恨みがましい視線を楽しみつつ完璧に無視、豹頭王に劣らぬ鉄面皮で微笑む元魔道大公。

「回復途上の御体には相当の御負担であろうが忝い、重ねて感謝するぞ。
 宜しく頼む、俺も何時なりと動ける様に待機しているからな」
 時が移る、折角の時機《チャンス》を逸する愚は避けねばならぬ。
 竜王不在の虚を突き、キタイ解放の戦いを可及的速やかに開始すべし。
 拙速を尊び建設的に事を進めたい、と強い口調で断言する事で言外に強調。
 2人も流石に重ねて漫才を演じる愚は犯さず、閉じた空間へ姿を消した。

(イシュト、私だ、アルド・ナリスだよ。
 大変、待たせてしまって済まないね。
 運命共同体と誓ったマルガの約束は、忘れていないよ。
 内密に話がしたい、人払いをしてくれないか)
 イシュトヴァーンの脳裏に心話が響くと、直ちに小姓達は追い払われた。
 国許で留守を預かる元提督の腹心、新王に付き従う忠実な副官の姿を求め飛び出す。

 中原の風雲児は己の思い通りにならぬ戦況に苛立ち、側仕えの小姓達は戦々恐々の毎日。
 ゴーラ王の天幕は常に緊張感が張り詰め、薄氷の如く木っ端微塵となるか誰にもわからぬ。
 小姓達は御機嫌の麗しくない主君の傍を離れ、ゴーラ陣中を駆け巡り心の中で神々に感謝。
 束の間でも解放された事を大歓迎、命令に従い誰も残らず総出で穏健な纏め役を捜索。
 僭王が多少は気を許す唯一の御気に入り、副官を務める海の兄弟マルコも例外ではない。
 神経を磨り減らす空気に心気を消耗、口実を設け離れていた所を発見され天幕へ舞い戻った。

 あからさまに安堵の表情を面に昇らせ、平伏する小姓の1人に珍しく笑顔を見せ人払いを命令。
 待ち受ける2人の前で不定形の闇が生じ、霧の中から歩み寄る人影の様に旧知の姿が現れる。
「ありがとう、イシュトヴァーン。
 すっかり遅くなってしまったね、また会えて本当に嬉しいよ」
 温かい言葉を掛けると同時に光輝く笑顔を向け、黒曜石の如き瞳が内心の感情を吐露。
 良く似た魂の共鳴に嫉妬、顔を顰める魔道師と同僚4人は完璧に無視された。

「ナリス様、立てる様になったのかよ!
 車椅子も無しで、ホントに大丈夫なのか?」
 嘗て幽霊都市ゾルーディア、氷雪諸国を巡った天性の冒険児。
 咄嗟に紅の傭兵が顔を覗かせ、思わず反射的に盟友を案じる言葉が出る。

「おかげさまでね、前に会った時より数段は良くなっている。
 まだ長時間は保たないけれど暫くすれば元通りさ、もう大丈夫だよ」
 底無しの黒い双つの瞳が、不安と猜疑を湛えたもう双つの黒い眼を覗き込む。
 闇の王子は前置き不要と判断、時間を無駄にせず核心に触れる話を始めた。

「挙兵と同時に魔道師のアルノーに密書を持たせ、
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