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豹頭王異伝
新風
後催眠の術
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「俺は彼に負い目と言うか、慙愧の念を感じる。
 已むを得ず彼に負わせた役割が、決定的な運命の分岐点となった気がしてならぬ。
 彼がゴーラの冷酷王と称されるに至った成行、運命の変転を覆す事は不可能だが。
 俺は彼が一人前の国王として、と云うより、1個人として、己を立て直して貰いたい。
 陽気な紅の傭兵に戻る機会、本来の個性を取り戻す事は出来ぬかと考えている。
 心の安らぎを得るとまでは言わぬが、多少は精神的な息抜きも必要だろう」

(流血の惨事を繰り返す赤い街道の盗賊、中原最凶の無法者に気遣いは無用ですよ!)
 咄嗟に想起した思考を隠蔽する秘術、精神障壁《サイコ・バリヤー》は展開中だが。
『修行が足りないね、何もかも御見通しだよ。
 君の心を過った声が聞こえなかった、とでも思うのかね?』
 雄弁な闇色の瞳が鉄壁の防御、グラチウスにも気配を悟らせぬ隠行の術を貫通。
 思わず集中が乱れ、表情も動揺。
 ヴァレリウスの内心が暴露され、豹頭王の髭を微かに震わせた。

「全く同感ですね、私も彼には運命的な絆を感じています。
 豹頭王の御心も解らぬではないが、現在の彼は新生ゴーラを率いる野心的な国王。
 仮想敵であり目標とする貴方に、内心を吐露する事は不可能でしょう。
 失礼して私が先に彼の許を訪れ、直に対面して話をしてみたいのですが。
 魔道師も側近も追い払い、2人だけで話せば彼の内心も聞き出せると思うのです。
 閉じた空間から覗き見する分には野生の勘を誇る魔戦士、予知能力者も気付かぬでしょう」

 リンダに降臨した謎の存在が『守り、遮る者』と告げた闇と炎の王子。
 古代機械の指名した《マスター》、アルド・ナリスは豹頭の戦士に微笑。

「ナリス殿に御足労を願う事となるが、事前工作を御願いした方が良いかもしれぬ。
 キタイから竜王の勢力を追い払う為には、イシュトヴァーンの協力も必要となるだろう。
 互いに国を背負い、色々面倒な手順を踏まねばならぬ立場には違いあるまいからな。
 彼には彼の言い分もあろうが時間が惜しい、取り敢えず対応は全面的にお任せする。
 御借りしている魔道師ギール殿の見た所、彼は何者かに操られている様だが。
 レムスと対面の際、彼の裡に竜王が顕れた。
 ナリス殿に危害の及ぶ可能性ありとすれば、俺が直接対決する方が良いかもしれぬ」

「イシュトは私の従兄弟レムスと異なり催眠術、精神支配の類と推察しています。
 カル・モルを隠れ蓑に竜王が憑依、身体を乗っ取る事が可能な状態とは思えませんが。
 万一に備え、ヴァレリウスを含む魔道師28名も同行します。
 彼の観察が済み次第に戻ります、話の続きは其の時と云う事でよろしいでしょうか?」
 古代機械の認める《マスター》、2人の対話を殊勝にも無言
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