第二十三話 完全にその十
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「西郷さんみたいな」
「西郷さんが好きだから西郷さんみたいな人と結婚されたんですか」
「そうなの、若し西郷さんご本人と会えたら」
その時はともだ、彼は話した。
「一生添い遂げたいと思っているわ」
「一生ですか」
「西郷さんが結婚していても」
笑って言うのだった。
「適わない恋でもね」
「不倫でもですか?」
「不倫は絶対に駄目だけれど」
副所長は倫理観も強い、それでこうした考えも強く持っている。しかしそれでも西郷隆盛に憧れを抱いているからこそというのだ。
「そして西郷さんが望まなくても心はね」
「西郷さんに向いていましたか」
「西郷さんご本人と会えたらね」
「そこまでお好きなんですね」
「尊敬しているの」
西郷、彼をというのだ。
「人としてね」
「西郷さんですか」
「蓮見さんは好きかしら」
「凄い人だったと思います」
優花は副所長の問いにこう答えた。
「明治維新はあの人がいたことが大きかったですよね」
「大久保さんもいてくれてね」
「だから出来たことですね」
「そうよ、西郷さんの器がそうさせたのよ」
幕末から明治維新の激動の時代、日本はその時代を乗り切れたというのだ。
「あの人の器と大久保さんの頭がね」
「そうですよね」
「大久保さんも好きだけれど」
「やっぱり第一は西郷さんですか」
「私はね。西郷さんみたいな人を好きになるとね」
それだけでというのだ。
「幸せだと思うわ」
「じゃあ先生は幸せですか」
「そう思っているわ」
自分自身をだ、優花に微笑んで答えた。
「実際にね」
「そうなんですね」
「あれだけ素晴らしい人はいないから」
こう思うからこそというのだ。
「だからね」
「素晴らしい人を好きになれたら幸せですか」
「そうよ、あと先生は西本幸雄さんも好きよ」
「野球監督の」
「ええ、あの人もね」
大毎、阪急、近鉄の三つのチームで監督を務めどのチームも優勝させた。合計八回リーグ優勝を果たしたが残念ながら一度も日本一にはなっていない。
「好きよ」
「凄い人だったらしいですね」
「厳しくてそれでいて心の広いね」
「そうした人だったんですね」
「だから皆ついていったのよ」
選手達もというのだ。
「殴らわて怒られながらもね」
「そしてチームを優勝させたんですね」
「そうよ、あの人が率いていたチームは二つなくなったけれど」
近鉄と阪急がだ、日本のスポーツ界における多大な損失だ。
「その実績は永遠のものよ」
「そうですよね」
「先生は西本さんも好きなのよ」
「じゃあ西本さんみたいな人を好きになれてもですね」
「幸せよ」
それもまた、というのだ。
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