第二十三話 完全にその九
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「テレビとかを観ても」
「感覚が変わってきたわね」
「アイドルとか俳優さんを観ても前は格好いいとか思いました」
「じゃあ今はどうかしら」
「こんな人と付き合えたらとかちらっとでも思います」
そう思う様になったというのだ。
「そうなりました」
「それが女の子の気持ちよ」
「男の人に対する」
「前は女の子のアイドルや女優さんを観てそう思ったでしょ」
「ちらっとでも」
「それは異性に対する意識よ」
そうした感情だというのだ。
「女の子が男の子に対する感情でね」
「男の子が女の子に対するですね」
「そうした感情なのよ」
「そうなんですね」
「恋愛の対象が変わってきているのよ」
「男の人へと」
「そうよ。ただ貴女は同性愛は抱かなかったみたいね」
副所長はこのことは冷静に述べた。
「どうやら」
「そうみたいです」
優花は自分でも頷いて言った。
「何か」
「そうね、女の人を観てもそうは思わないわね」
「同性愛には偏見はないつもりですけれど」
「けれどそうした気持ちにはならないわね」
「はい、それは」
「嗜好はその人それぞれなのよ」
恋愛、性欲のそれもというのだ。
「貴女は異性に向いているのよ」
「その好みが」
「そうよ。それとね」
「それと、ですか」
「好きなタイプも定まってくるわね」
「男の人のですか」
「そうなってくるわ」
これからというのだ。
「女の子になったから、それか男の子だった時の好みがね」
「女の子としてですか」
「出るかも知れないわね」
「そうなるかも知れないですか」
「鏡みたいに裏返しになって」
そうなってというのだ、優花は副所長の今の言葉を聞いて男だった時の自分と今の女になった自分が背中越しに重なった気がした。
「そうなるかもね」
「ですか」
「ええ、そこはそれぞれよ」
人の、というのだ。
「好みはね」
「男の子の好みも」
「そう、けれど大事なのはね」
「やっぱり中身ですよね」
「私だったら西郷さんみたいな人ね」
微笑んでだ、副所長はこうも言った。
「ああした大きな人がいいわ」
「西郷さんですか」
「そう、主人もね」
「あっ、結婚されてたんですね」
「子供も二人いるわ」
副所長は自分の話もした。
「上が男の子で下は女の子よ」
「そうだったんですね」
「主人は身体も心も大きな人なのよ」
「西郷さんみたいにですか」
「船長さんをしているのよ」
船でというのだ。
「だから出張が多いけれど」
「素敵な人ですか」
「そう、いい人よ」
実際にというのだ。
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