巻ノ五十六 関東攻めその十
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「前田殿、奥村殿ともな」
「お会いしてですな」
「そしてお話をしたい」
「殿もそう思われていますか」
「そう考えておる、出来れば」
こうも言った幸村だった。
「奥村殿ともお話がしたいな」
「ご家老のですな」
「あの方とも」
「そう考えておる、前田殿はかつて天下の傾奇者であった」
よく知られていることだ、彼は織田家において主君の信長と共に名うての傾奇者として武勇も誇っていた。
「豪放磊落であったという」
「器も非常に大きく」
「胆力も相当だとか」
「だからこそな」
そう聞いているからこそというのだ。
「拙者も是非な」
「前田殿とお会いしたい」
「そうなのですな」
「そう考えておる」
「今日は休むがな」
信之も湯の中にいる、そこから主従に言う。
「明日出陣じゃ」
「そしてですな」
「上杉殿、前田殿の軍勢と合流する」
実際にそうするというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「父上もおられるが」
北陸勢の軍勢の中にだ。
「しかしな」
「前田殿もですな」
「おられる、お会いしようぞ」
「それでは」
「うむ、楽しみにしておれ」
こう幸村に言う、そして実際にだった。
沼田城にいる者達はこの日はじっくりと休んだ、そして次の日だった。
信之を大将幸村を副将としてだ、十勇士達は幸村についてだった。
城に留守の者達を置いたうえで出陣した、その時にだ。
信之は幸村にだ、こうしたことを言った。
「これより出陣じゃが」
「はい、合流の為の」
「そうであるが」
しかしというのだった。
「一つやることがある」
「と、いいますと」
「うむ、奥にな」
まさにというのだ。
「挨拶をしなくてはならぬ」
「そうですか、では」
「少し時間をもらう」
これからというのだ。
「そうしたいがいいか」
「はい」
微笑みだ、幸村は兄に答えた。
「それでは」
「では今から行って来る」
早速だった。
「すぐに戻る」
「ではその間は」
「軍を頼む」
その暫しの間というのだ。
「そうしてくれるな」
「わかり申した」
幸村も頷いて兄に応えた、そしてだった。
信之が戻るまで軍を観ることにした、彼はすぐに軍勢に言った。
「暫し休んでおれ」
「殿が帰ってくるまでですな」
この城では信之が主なので足軽達は彼をこう呼んだ。
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