巻ノ五十六 関東攻めその八
[8]前話 [2]次話
「川に入るぞ」
「この川にですか」
「今より」
「ここで泳ぐ」
その川でというのだ、見れば幸村は既に褌だけになっている。信之も同じで泳ぐ格好になっている。そのうえでの言葉だ。
「思いきりな」
「その後は風呂じゃ」
信之も言う。
「泳いだ後はな」
「風呂で思いきり温まるぞ」
「そうすればですか」
「酒が抜ける」
「そうなのですか」
「思いきり泳いでそして風呂で暑くなるまで温まる」
そうすればとだ、幸村は十勇士達に話した。
「そうすればな」
「酒が抜けて」
「楽になっていますか」
「それではですな」
「これより」
「うむ、泳ぐぞ」
こう言ってだ、実際にだった。
信之と幸村はまずはじっくりとだった、体操をしてだった。
川に入った、そして十勇士達もだった。
丹念に体操をして泳ぎはじた、それもじっくりとだ。幸村はこの時に十勇士達に対してこうしたことを言った。
「泳ぐからにはな」
「はい、真剣にですな」
「思いきり泳ぐべきですな」
「それこそ川の流れに逆らう様に」
「いつも通り」
「そうじゃ、鯉になったつもりでな」
こうも言うのだった。
「思いきり泳ぐのじゃ」
「水術にも精を出しておるか」
信之も泳ぎつつ幸村達に言った。
「相変わらず」
「はい、これは武術でも欠かしてはならぬもの」
「だからじゃな」
「こうしてです」
「よいことじゃ、では今もな」
「はい、思う存分泳ぎます」
「わしもそうするぞ」
見れば信之もだ、見事な泳ぎである。そして。
幸村主従も泳ぐ、そうして泳いでいるとだった。
「いや、何かですな」
「酒が抜けてきました」
「随分とです」
「楽になってきました」
「うむ、そうであろう」
幸村はその十勇士達に泳ぎつつ言った。
「二日酔いになればな」
「その時はですな」
「こうして泳いで、ですか」
「身体を冷やしますか」
「身体も動かして」
「どちらも酒を抜くのによい」
泳ぐと、というのだ。
「だからまずはな」
「こうして泳いで、ですな」
「そしてですな」
「酒を抜く」
「そうされますか」
「そしてな」
幸村はさらに言った。
「後は風呂じゃ、そして水も飲むぞ」
「泳いだ後で、ですか」
「水も飲み」
「そしてですか」
「風呂ですな」
「水を飲むことでもな」
それでもというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ