21話 一夏VS鈴 その1
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た一夏は中央に、鈴は中央近辺から壁際に背を向けることになった。
―――……なによ。ホントによく分からないわね。
中央に脱出した一夏は呼吸を整えながら状況を整理する。
―――よし、端に追い詰められる前に脱出出来た。鈴と鬼一の試合を見る限りだと鈴に追い詰められたらどうしようもないんだ。だから早め早めに動いてスペースを作らなきゃいけない。
普段の雪片と違って葵の握り心地はまだ手に馴染んでいない。こんな状態で切り結んでも勝つどころか戦うことすら困難。
そして、鈴のフルスロットルに一夏はついていける気がしなかった。鬼一は情報と先読みから鈴の身体能力と動き出しに対応していたが、一夏は自分の手札では対応できるとは思っていない。
だからこそ鈴のテンション、スイッチが入りそうな行動は極力避ける必要があった。それが今の状況と言ってもいい。
鬼一からみればこれは悪手と言ってもいい行動でもあったが。
がりっ、と音を立てて鈴は歯を食いしばる。自分の思い通りに展開が進まないせいなのか、その苛立ちと熱が少しずつ膨れ上がってくる。
「―――……こんのっ!」
龍砲を閉じた鈴は一夏に肉薄。こんなスローペースな試合など鈴は望んでいないから。せっかく待ち望んだ勝負がこんな微温いものであっていいはずがない。
「……っ!?」
やや虚を突かれた一夏は鈴を迎え撃つ。特に考えていたわけではない。考えるより前に身体が反応していた。
それが失着でもあったが。
鈴の迫力が一夏が後退を許さない。楔を打ち付けられたように一夏の足を止めた。これがセシリアなら理性を持って撤退を選択し、鬼一なら自分の勝てる舞台ではないと判断して一時的な敗北を受け入れたであろう。
鈴、セシリア、鬼一と一夏の大きな違いがここにある。3名にはそれぞれの意志やスタイルから必要なことを考え出し実行するためにリスクを支払う。そこには個人の主体性がある。
だが一夏にはその主体性がない。いや、その主体性を身につけている最中なのだ。
だからこそのミスが生まれる。
鈴の行動を読んでいなかった一夏は完全に後手に回される。それは一夏の劣勢を示す。
「はぁっ!」
鈴の猛攻に一夏は為す術などない。今の一夏が鈴に追い込まれたらひっくり返すことは不可能。それだけの差が両者の間にはある。傍目から見てもそう思わせる展開。
だが鬼一の見解は少々異なるものだった。
『なぜ、ここまで一方的に攻め込まれているにも関わらずまだ一度も絶対防御が発動していないのか?』。
明らかに一夏は押し込まれている。身も蓋もないことを言えばここで決着がついても不思議ではないほどの内容。
一夏はもはや対応と言えるような対
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