21話 一夏VS鈴 その1
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付けられているスピーカーに目を向ける。だが、その視線に熱は無く、どこか空虚なものですらあった。
「……ねえ、一夏。なんであんたは其処に立っているの?」
「……俺、は……」
言葉少ない、いや、もはや返答とも言えないような一夏の煮え切らない言葉に、鈴は腹の底から言葉を吐き出す。
そうしなければ目の前の少年は、自分が一体なんでここに立っているのか、そんなことすらも理解できないようだったからだ。
「何か守りたいものがあるから戦いに来たの? それとも私と勝負しに来たの?」
「……」
舞台に立っているのに、今なお心を止めている一夏に鈴はありったけの怒りを込めて激情に塗れた激を叩きつける。
「……真剣勝負の場に立っているならウダウダ考えるな織斑 一夏っ!!」
「っ!?」
その怒りは一夏の鼓膜を、身体を、心を震わせる言霊。
「あんたが何を考えているのか、ハッキリ言って全っ然わからない! あんたはそうやって1人で抱えようとしている! 私が相談に乗った時だって、あんたは結局自分が何をしたいのか話さなかった! いや、その意志があるかどうかもハッキリしていない!」
結局はそうなのだ。
一夏は『何をしたいのか』ではなく、『どうすればいいのか』だった。鈴に相談してきたのは間違いなく後者。
前者は自分の心に従うことであり、そこに伴う責任も絶望も全て引き受けること、後者は自分以外の誰かから言葉を聞くことで自分が楽になることだ。
あの時、あいつはこういった。あの時、あいつがこういったから。と自分を納得させることが出来る。
「だから、私があんたに選択肢を教えるわ! あんたは戦うのか、ここから逃げるのか! 好きに選びなさい!」
あまりにも単純な二択。一夏の悩みなど知ったこっちゃないと言わんばかりの選択。
「もし、あんたが守るために誰かを犠牲にするのが間違いっていう考えがあるならそれはそれでいいわよ! だけどね! この場に置いてそれは私にとって最大の侮辱と受け取ってあんたを一生軽蔑するわよ!」
誰かの犠牲になる可能性など鈴はとっくの昔に覚悟している。覚悟していなければISなど自分から乗ろうとも思わなかった。辛いことや痛いことばかりで、辛酸を舐めさせられたことなどもはや数えられないほど。
自分の幼馴染と全力を出せる真剣勝負が出来る、そう分かった時は心から喜ばしかった。それだけでもこの1年間の価値はあったと胸を張って言える。
「……っ、ちょ、ちょっと待てよ鈴! 俺は……!」
「あんたは『真剣勝負で手を抜くのも抜かれるのも嫌い』だったはずでしょ!? あんたの真剣勝負はいつからそんなおかしくなったの!? 『真剣勝負』と犠牲を伴う『戦い』を混ぜるからそんなおか
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