第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#21
DARK BLUE MOONXIII 〜D・A・H・L・I・A〜
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【1】
「ただいま」
白い肌を血に濡らしながらも少女は晴れやかな表情で、
本当にただ帰宅したような口調で青年に言った。
「……」
承太郎は口元に微笑を浮かべたまま無言でソレに応じる。
心中は自分が戦い抜いた後のような、
奇妙な充足感で満ちていたがそれを言葉にする術は持たない。
ただ、もしアラストールがいなければ、ラミーがいなければ、
そのままシャナを抱きかかえ、いやがる彼女を思い切り何度も何度も
振り回してやりたいと想った。
正直それ以外、限界を超えて最後まで立派に戦い抜いたシャナを
称えてやれる方法が想いつかなかった。
(最高、だ……やっぱりおまえは……最高だ……)
代わりに己の裡でそう呟きながら無頼の貴公子はその躯を屈ませ、
首にかけた神器を少女にかけ直す。
「……」
頬を少し紅潮させそれに応じるシャナも、
今の気持ちを伝える術を持たずただそのまま立ち尽くす。
もしアラストールがいなければ、ラミーがいなければ、
すぐにでも彼の胸の中へ飛び込んでいきたかった。
そして自分がそうする以上に、それよりももっと強い力で
壊れる位抱き締めて欲しかった。
貴方の為に戦った事を、貴方と一緒に戦っていたという事を、
その抱擁を通して心の中に伝えたかった。
どうしても言葉には出来ない事も、互いの存在さえ在れば、
「人間」 は確かに伝える事が出来る。
何故か既視感にも似た強い高揚が少女の胸を充たしていた。
「……どーでもいーけどよ。オメー、オレの流法パクったろ?
最後のアレァどー見ても “スター・ブレイカー” だし、
嵐撃の軌道もスタープラチナのそれと同じだった。
やれやれ気ィつけねーとうかつにワザも出せねーな。
片っ端から盗まれちまう」
場を包む和やかな雰囲気も悪くなかったが、
承太郎はわざと邪な微笑を浮かべ意地悪そうにシャナへ告げる。
「な! う、うるさいうるさいうるさい!
ちょこっと参考にしただけよ! 別にアレじゃなくても勝てたんだから!」
対してシャナは件の如く顔を真っ赤にして承太郎に食ってかかる。
その様子 (尚も文句を続けるシャナ) を黙ってみつめながら、
承太郎はやっぱりこの方がコイツらしいと密かに想った。
からかうと面白いし、落ち込んだ顔は似合わない。
やかましくてうるさい女は確か嫌いだった筈だが、
どうも目の前のこの少女だけは例外であるらしいという事実を
今更ながらに認識しながら。
その、刹、那。
「!!」
「!?」
二人の背後から途轍もなく狂暴な存在の奔流が、
この世のありとあらゆる災厄を裡に孕んだかのような圧威と共に立ち昇った。
奇禍の驚愕に承太郎、シャナが同時に振り向いた先、
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