十七話:ガールズトーク
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ンヌ。聞いていますか?」
「っ! すいません、お父さん。何か用ですか?」
無意識のうちに靴を履いていたところでジルに声を掛けられていたことに気づく。
慌てて謝りながら視線を向けるがジルは何とも言えない表情で見つめている。
「いえ、お出かけになられるようでしたのでどちらに行くのか尋ねただけですよ」
「あ、はい。少し散歩に行ってきます。夕飯には帰ります」
「わかりました。今日は私が夕飯を作っておきますのでゆっくりしてきてください」
明らかに自分の様子がおかしいのを感じて気遣いを見せる父親に申し訳なくなり頭を下げる。
そして行ってきます、の言葉もなしに外に出ていく。
ジルはそんなジャンヌの様子を黙って見つめながら大きく息を吐くのだった。
「どうやら一肌脱ぐ必要がありそうですね。……今度は陰からでなく正面から行くとしましょう」
何やら意味深な言葉を呟きジルは剣と鎧を取りに家の中に戻っていくのだった。
ジャンヌは町の中を当てもなく歩き回る。
幸いなことに空はどんよりと曇っており快適な気温となっていた。
しかし、それを素直に喜ぶことができずに彼女は悩み続ける。
瞳は無意識のうちに彼の姿を探し彷徨う。
そのせいか、前方への注意が疎かになる。
「キャッ! す、すみません」
「ちょっと、しっかり前見て歩きなさいよ……て、あら、ジャンヌじゃない」
「あ、マルタ様」
ついに通行人とぶつかってしまい謝るがよくよく見るとそれは先輩のマルタであった。
一年生の頃から世話になっている相手であるのでつい気が緩んでしまう。
「あなたも買い物に来たの?」
「い、いえ。ただ歩いていたらいつの間にかここに……」
尋ねられて素直に答えるとマルタは怪訝そうな顔をする。
それもそうだろう。ジャンヌの言葉は明らかに日常にそぐわないのだから。
彼女自身、後になってハッとするがもう遅い。
マルタは何かがあったのだと察して彼女に微笑みかける。
「これからお茶でもしようと思っていたんだけど、あなたもどう?」
「え? あ、はい。私は大丈夫です」
「よし、決まりね。じゃあ、あそこの喫茶店に入るわよ」
お誘いではあるが有無を言わせぬ圧力を感じ取り頷くジャンヌ。
マルタはその態度に満足そうに頷くとジャンヌの手を引っ張りさっさと喫茶店に入っていく。
中に入り席に着き適当に紅茶を頼んだところでマルタは息をつく。
「さて、何か悩み事かしら? 話に乗るわよ」
「ど、どうしてわかったんですか?」
「いや、あなたが明らかにおかしかったから聞いてみただけよ」
「そ、そうだったんですか……」
真顔で答えられて恥ずかしくなるジャンヌ。
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