第n+10話 お祭り心のつるべ上げ
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世界人の登場も、祭りの節目の年に丁度良かったそうだ。
「では、この世界を満喫していって下さい」
頭を剃った男はそういうと、優しげに微笑み両手を合わせた。
というわけで、夏雄と美都子は屋台を見て回っている。
「秋って感じするわよねー」
「ふーん、そうだな」
言われてみれば、豊穣のお祝いやその実りの料理が多く立ち並んでいる気がする。
「実りの秋ねー」
「だな」
「スポーツの秋でもおるし」
「だな」
「芸術の秋とも言うし」
「だな」
「女心の秋とも言う」
「言わねぇな」
「又の名を、食えない嫁の秋」
「言わねぇって」
「秋雄君にとっては何の秋?」
「俺は夏雄だ」
「それはそれとして」
「え、うーん……」
夏雄は少し考えこんだ。
「汚職事件の秋?」
「なんでだよ」
「秋は過ごしやすいでしょ。過ごしやすいと、つい色々冒険したくなっちゃうでしょ?」
「だからって犯罪は無ぇよ」
「ふふふ、でも、犯罪かそうでないかなんて千里程の差しか無いわ」
「むちゃくちゃ長ぇな」
「1日千里、悪事は万里。悪事は10日にしてなるってね」
「もう何が言いてぇか分かんねぇよ」
「さて、くじでも引きましょう」
「くじ?」
美都子が向いた方を夏雄も向くと、法被を着た若い男とガラガラくじがあった。
「やるのか?」
「ええ、今日は過ごしやすいから」
「よく分かんねぇ」
ガラガラ
チリンチリンチリン!
「あら」
「うぉっ!」
結果は3等。いかにも真新しそうな家庭用ゲーム機だ。
「塞翁の耳から水が漏れるとは言ったものね」
「言わねぇよ」
美都子は早速近くのベンチに座って中を開いている。
「ふーん」
「どんな感じなんだ?」
「……成る程。栗より旨い物は無いとは言ったものね」
「どうした?」
「当たり前だけど、ソフトが入ってないのよ」
「……そっ、だな」
「まぁいいわ。インテリアにすればいい感じでしょう」
「え……どうなんだ?」
「インテリアの秋」
「初耳だな」
「秋を作る秋」
「言いたい放題だな」
「そうよ。言語学者は超能力者じゃないわ。私達が、もっと時代に沿った、デジタルでハイテクノロジーな秋を考える必要があるのよ」
「例えば?」
「読電子書籍の秋」
「読書の秋でいいだろ」
「食べた気分の秋」
「虚しいな」
「格闘ゲームの秋」
「お前は動かないのかよ」
「異世界移動の秋」
「それは俺達だけだ」
といった時にはもう既に夏雄は日本に戻っていた。
いつものように付箋を確認する。
『豚もおだてりゃ春秋の数が年3度に登る』
「その豚何もんだよ」
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