ー第75層 迷宮区ー
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しいのがいたが気のせいだろう。
抜け駆けして求婚した男が血の涙を流す男たちによって異端審問にかけられているのは見なかったことにして、一仕事終えて回復ポーションを呷る相棒へと駆け寄った。
「お疲れ、ユーリ」
「ほんとだよ……」
お前も手伝えよ、と言いたげな視線を受け、思わず苦笑いを浮かべる。 まさか一人で中ボスを相手取った挙句、倒してしまう奴とか他に誰がいるだろうか。ヒースクリフやキリトたちならやりかねん。 ユニークスキルはやっぱりチートだと思います。
がしゃんがしゃんとさっきから煩いなぁ、と音源の方向に視線を向けると聖龍連合の頼れる隊長ことシュミットがこちらに向かって歩いて来ており、片手を上げて挨拶してくる。
「あんたが牛の方を受け持ってくれたおかげでだいぶ助かった」
「どういたしまして」
「お、シュミットはん、お疲れ〜」
「シィさんも、いつもお世話になっている」
いえいえ、いつもがっぽり儲けさせていただきありがとう、とは内心で留めてにっこりと笑顔を返答とする。 その間にも彼らの話は進んでいたらしく言葉が交わされていた。
「じゃあ、この先のマッピングは頼んでいいか?」
「あんたらにはいつも世話になってるからな。 それくらいは安いもんだ。 それに今回はユーリさんのおかげで消耗も少なく済んだからな」
お礼の気持ちか、マッピングを快諾してくれたシュミットは再びガシャンガシャンと音を立てて仲間たちのもとへと戻って行く。 シュミット隊がこの先のマップを埋めるのに出発するのを見送っているといつもまして疲れた様子のユーリが大きくため息を吐いた。 心なしか尻尾の毛並に艶がない気がする。
「さて、帰りますかね」
「ん……」
こくりと頷き、もと来た道を引き返して行く。
「そういえばさ、ユーリも意外と戦闘狂さんだよね〜」
「そんなこと……ない、はず」
「片割れとはいえ、中ボスクラスを一人で倒す人が何を言ってんだか」
「うぐっ……否定できん」
よほど気にしてたのか、がくりと肩を落として落ち込んだ相棒を見て思わず苦笑する。 こんなにナーバスで、可愛げのあるユーリが巷で最優の剣士様とか言われてるとか信じられようか、いや信じられない。 なんでも彼氏にしたいプレイヤーランキング、彼女にしたいプレイヤーランキングでどちらもトップ5には入っているらしく、中でも彼女にしたいプレイヤーランキングでは私よりも上だとか。 思い出しただけでムカムカするので仕返し代わりに頭を掴まえるとヘッドロックしつつ、わしわしと乱暴に髪の毛を撫でる。
「わっ、ちょ! やめろ、バカっ」
「〜〜〜〜♪ 嫌よ嫌よも好きのうちってね〜」
ジタバタと暴れるがその抵抗はいつもよりも弱々しい。
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