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立ち上がる猛牛
第二話 エースとの衝突その四
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「スズはほんまの意味でエースになれる、そやからな」
「今の鈴木をですか」
「速球派から技巧派に転換ですか」
「そっちにしていきますか」
「何としても」
「そうする、あいつが何とかならんと近鉄は勝てんわ」 
 ミスターバファローズとも言われたエースである彼がというのだ、それで西本は鈴木にことあるごとに言ったが。
 しかし鈴木は常に反発してだ、こう西本に言い返し続けた。
「わしにはわしのやり方があります」
「それでかいな」
「はい、忠告は無用ですわ」
 こう言って背を向けるばかりだった、西本は鈴木に言い続けるが鈴木は背を向けるばかりでだ。何十四年のシーズンは過ぎていった、終わってみれば前期後期合わせて五位だった。
 その順位を見てだ、ファン達はまた言った。
「あかんなあ」
「打線はましになったけどな」
「やっぱりしっかりせんわ」
「しっくりいかん」
「スズがあかん」
「あいつはもう勝てん」
 その鈴木の不調を見ての言葉だ。
「他にエースおらんしな」
「大田も仲根も育ってへんし」
 太田幸司と仲根正広、共にドラフト一位で獲得した。しかし二人共確かに思う様に勝ててはいない。
「神部民男もおるけどな」
「あいつだけやとな」
「やっぱり駒不足や」
「スズがああやと」
「やっぱり速球派は衰えたらあかん」
 その時点で、というのだ。
「それで終わりや」
「勝てんようになる」
「こら西本さんでもあかんわ」
「近鉄の優勝はないわ」
「その証拠に五位や」
「来年もあかんで」
「近鉄は優勝せんわ」
「三原さんも言うてたな」
 西本から見て二代前の監督である三原脩、西本が大毎オリオンズの監督だった時は大洋ホエールズの監督として日本シリーズで、阪急の監督だった時はこの近鉄の監督として戦った男だ。魔術師と呼ばれる名将だ。
「スズがエースの間は優勝出来ん」
「ああ、言うてたなそんなこと」
「ほなスズはエースやなくてか」
「神部とかにもっと出てもらうか」
「若い井本とかどや?」
 井本隆、右の若手投手である。
「あいつもよさそうやしな」
「太田とか仲根がなあ」
「この二人もうちょっと頑張ってくれたらな」
「どっちにしろスズはな」
「もうエースとしてあかんやろ」
 多くのファンもこう思っていた、だが。
 西本はあくまでだ、こう言った。
「やっぱりエースはスズや」
「スズを軸にしますか」
「投手陣はそういきますか」
「それでも」
「そや、あいつや」
 鈴木、彼だというのだ。
「あいつであくまでいくで」
「ですが速球がもう」
「あいつのストレートは衰えています」
「あいつは速球派ですから」
「もう」
「そやからや」
 西本はここでまたこう言った。
「あいつには変わってもら
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