第十三話 旅立ちその六
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「マリー様のお姉様だからこそ」
「だから常に共にいたかった」
「そうだったのですね」
「それで、でしたね」
「四人でいたかった」
「そうだったのですね」
「そう思っていました」
是非にという言葉だった。
「私もお二方も。ですが」
「それでもですね」
「マイラ様はお三方に背を向けられ」
「お一人になる道を選ばれ」
「今もですね」
「孤独なままですね」
「旧教徒であること、そして側室のご息女であられること」
セーラにはわかっていた、マイラが何故自分達と決して交わろうとしなかった。幼い頃からそうでありそれは今もだ。
「それが為に」
「残念なことです」
「マイラ様だけが交わらない」
「薔薇も然り」
「それが為にですね」
「私は持って行くことができません」
黒薔薇を悲しい目で見ての言葉だ。
「どうしても」
「だから三色ですね」
「その薔薇達を持って行くだけですね」
「それだけですね」
「そうです、ですから」
それでとだ、セーラはまた三色の薔薇に視線を戻して話した。
「この薔薇達だけ持って行きます」
「セーラ様とマリー様、マリア様の薔薇を」
「その薔薇達を」
「私達は離れ離れになっても共にあります」
こう言うのだった、マリアと同じく。
「ですから」
「わかりました、それでは」
「持って行かれて下さい」
「他のものも同じく」
「警護の兵達と犬達も」
セーラもまた犬達を連れて行くことになっている、それは毒味役だけでなく警護役も兼ねている。その為に連れて行くのだ。
それでだ、セーラも今こう言ったのだ。
「そして薔薇達も」
「はい、それでは」
「全て持って行きましょう」
「そして半島でもですね」
「お幸せに」
周りの者達も言う、セーラもまた薔薇達を持って行くことに頷きつつ。
二人の姫達は嫁ぐ為のあらゆる用意をしていた、そのうえで。
マリーとも最後の時間を過ごしていた、マリーはテーブルを囲む二人に言った。
「いよいよね」
「ええ、もうすぐにね」
「私達は旅立ちます」
二人もマリーに答える。
「それぞれの国に」
「そうします」
「そうですね、私はこの国に残り」
そしてとだ、マリーも言う。その手には水が入った杯があり中のものを口にしている。
「そのうえで」
「これからもこの国に生きる」
「そうされますね」
「はい」
そうだという返事だった。
「そうなっています」
「そうね、けれど」
「私達はこれからも一緒です」
マリーは強い声で言った。
「離れ離れになっても、そして」
「そして?」
「そしてといいますと」
「お互いに何かあれば」
マリアとセーラを見て言うのだった。
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