第十三話 旅立ちその三
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「これだけの犬達を」
「はい、そうです」
「毒味役としてです」
「連れていきます」
「そして犬達も警護をします」
「寝室の前にも置かれて下さい」
「そうして御身を守られて下さい」
こう口々だ、周りの者達はマリーに告げた。
「異国ではこの国以上に何があるかわかりません」
「勝手を知った国ではないですから」
「くれぐれもです」
「お気をつけ下さい」
「その為にもです」
是非にというのだ、犬達についても。
彼等のその言葉を聞いてだ、マリアは神妙な顔になってこう言った。
「ここまでしてなのね、私は」
「はい、御身を護らなくてはなりません」
「それが他国に嫁ぐということです」
「マリア様もそうされていますし」
「是非」
「わかったわ」
今度は一瞬だが瞑目して答えた。
「そうしたものということが」
「嫁がれるということはです」
「そうした面もあります」
「ですから実にです」
「お気をつけ下さい」
「そうなのね、そして島国において」
マリアはさらに言った。
「私は王妃となり子を産み」
「両国の融和に務めて下さい」
「必ず」
「それはわかっているわ」
今度は確かな顔で頷いた。
「嫁ぐからには」
「では、です」
「式はあちらの国でします」
「あちらでの用意は進んでいるそうですし」
「式はご期待下さい」
「相当なものになるとのことです」
王妃になる者のそれだからこそというのだ。
「幸せもあります」
「警戒も確かにありますが」
「楽しまれることは楽しまれて下さい」
「是非」
「そうなのね」
「それが世の中です」
「楽しみもあればそうした剣呑なものもあります」
それが世の中だというのだ。
「難は避けるべきですが」
「それもありますので」
「あらゆるものがなのね」
「はい、ありますので」
「楽しまれることは忘れないで下さい」
「何とぞ」
「わかったわ、そして」
ここでだ、マリアは自分からこの話を出した。
「信仰も」
「左様です」
「信仰もまた、です」
「新教のそれはです」
「必ず」
「そうね、私は新教徒だから」
このことを自覚してだ、マリアも言うのだった。
「それを忘れてはならないわね」
「何としても」
「それはです」
「忘れずにです」
「島国に行かれて下さい」
「あの国は北の王国程ではありませんがまだ旧教の力が強いです」
この国と比べてというのだ。
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