第八十四話 西瓜割りその六
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「とても」
「そうでしょ、西瓜割りはね」
「割ることも楽しみですが」
「その雰囲気を楽しむものなのよ」
「そういうことですね」
「そういうことよ」
こう言うのだった、そしてだった。
ジョーンさんはにこりと笑ってだ、僕と日菜子さんにこう言った。
「八条荘でもしたいですわね」
「いや、それはね」
日菜子さんはジョーンさんの今の言葉に笑顔で応えた。
「砂浜でするものだから」
「そうお話されていましたね」
「そう、だから八条荘のお庭でしてもね」
「言われてみましたら」
「そうでしょ、合わないでしょ」
「はい、こうした砂浜でないと」
「西瓜割りは場所を選ぶのよ」
行うその場所をだ。
「だからね」
「八条荘では、ですわね」
「するにはね」
どうにもというのだ。
「合わないわね」
「そういうもですわね」
「そう、だからするにはね」
「こうした砂浜ですわね」
「そこがいいの、海が傍にあるね」
「確かに。牧場でしましても」
僕はジョーンさんが今言う牧場が何処の牧場かわかった。ニュージーランドにあるジョーンさんの実家の牧場だ。
「今一つ以上に」
「合わないわよね」
「そうですわね」
「そうなのよ、西瓜割りは場所を選ぶ遊びよ」
「わかりましたわ」
「というかこの遊びは本当に日本限定ね」
「ニュージーランドにはありませんわ」
「オーストラリアにもない」
エルザさんも言って来た。
「剣道をする人はいても」
「それでもなんだね」
「そう、ない」
エルザさんは僕に答えた。
「西瓜割りは」
「西瓜は食べてもね」
「オートラリアは冬に泳ぐけれど」
オーストラリアでは夏が涼しくて冬が暑い、季節の状況が日本逆なのだ。このことはニュージーランドも同じだ。
「それでも西瓜割りはしない」
「そうだよね、やっぱり」
「若しやるのなら」
「その時は?」
「フェシング」
エルザさんは一言で言った。
「突き刺すかサーベルで斬る」
「はい、ニュージーランドもですわ」
ジョーンさんも言って来た。
「剣道は最近される方もいますけれど」
「フェシングが主流だね」
「はい、ですから」
「西瓜に刺すんだね」
「サーベルで斬るか」
「何か違うね」
「はい、この西瓜割りとは」
こう僕に答えた。
「むしろ西瓜刺しですわね」
「西瓜刺しね」
「風情があるでしょうか」
「難しいね」
想像してみてだ、僕はかなり引いた。それはもうギャグそれもシュール系のそれにしか思えなかった。それもかなりだ。
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