第47話
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大炎にも採用されている鉄盾だけに、魏軍の矢ではびくともしない。
そのまま斗詩達は矢の雨が途絶えるのを見計らい、徐々に橋を進んでいく。
しかし――橋の終わりに差し掛かったところで、彼らの足は止まった。
正面から矢が飛んできたのだ。先程の高台による降り注ぐような射撃に加えて……。
密集陣形による防御は一方向に特化しているため、二方向での攻撃には対応しきれない。
それでも、陣形の外側に居る者たちが正面の矢を防ごうと奮闘したが――
頭上と身体の正面とでは面積が違う。どこぞのスパルタン兵のようにファランクスを使いこなせれば話は変わってくるが、あいにく、そのような訓練は施していない。
もう一つ大きな問題がある。魏軍により橋を渡る陽軍との間に設けられた柵だ。
この柵が進軍を阻む致命的な障害となった。
その作り自体は単純な物、材木を縄で縛り合わせ並べただけだ。
しかし、使われている材木の一つ一つが頑丈な素材を使用しているらしく。
接近に成功して大斧の類を振るっても中々壊れない。水を含ませているらしく、火矢の効果もいまいちだ。
偶然かわいた部位を燃やせたとしても、消火用の水で消されてしまう。
最早、破壊するより縄を解いていったほうが早いという状態だが、その間に矢の的になってしまう。
「……」
斗詩には複数の選択肢がある。
一つ、人海戦術による突破。
犠牲は多いだろう。しかしそれでも、潤沢な兵力が自軍にはある。
形振り構わなければ突破は容易だ。
――駄目。こんな方法では、無駄に多くの血が流れるだけ。
二つ、一時退却し突破力の高い他の軍に任せる。
猪々子、恋、華雄、単純な突破力ならこの三軍に値する軍は少ない。
彼女達とその隊の力を持ってすれば、目の前の柵など廃材の化すだろう。
――これも駄目。他の誰かに任せられるのなら、麗覇様は私に託しはしない!
三……。
「……」
斗詩は何時の日か、袁紹に聞いたことがある。任せる人選の基準はどんなものなのかと。
彼曰く、能力や性格が大きな判断基準らしいのだが――……。
『我が人に何かを頼む時は、それが“出来る”と確信した者にしか頼まぬ』
気が着いた時には一人、密集陣形から飛び出していた。
二枚看板の一人、顔良。相方に比べて地味な立ち位置に甘んじている彼女だが。
既に英傑たるだけの能力は持ち合わせていた。
では、英傑となるのに何が足りないか。鍛練、才能、地位、違う、勇気だ。
己の力を信じ、前に出る勇気が“今まで”の彼女に足りなかった。
その勇気を“今の”彼女は手にしていた。
この大橋に挑む時だ。昔の自分のように震え、
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