ターン55 科学水龍と神の雷
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無視。たかだか数日顔を見てないだけなのに、なんだかもうずいぶんと顔を見ていないような気がする。
「夢想……」
何か言おうと思っていたはずなのに、何もセリフが出てこない。顔を見たら言いたいことはいくらでもあったはずなのに、その全てが吹き飛んだ。天上天下古今東西、男は美少女の涙にゃ弱いって相場が決まってるもんよ。
『よかった……本当によかった……って、私……!』
「……ごめん」
申し訳なさや嬉しさなどがこみあげてきていっぱいになり、博士やエドの目も気にせず泣きじゃくる夢想の顔を直視できず、目を逸らしてそれだけ返すのが精一杯だった。多分放っておくといつまでもそうしていただろうから、そのあたりで一度映像の前から引き離してくれた皆にはむしろ感謝すべきだろう。
「……ゴホン。では博士、もう一度確認します。見つかったレインボー・ドラゴンの石板からカードが完成しだいこちらの世界に転送装置を使って送り込み、その精霊の力を利用してアカデミアを元の場所にワープさせる。ただしレインボー・ドラゴンのカードを送るためには膨大なデュエルエナジーが必要となるため、こちらとそちらの世界でそれぞれデュエリストを用意してそのエナジーを賄うためにデュエルさせる……これでよろしいですね?」
『ワシにもこんな青春があったもんじゃのう……いや、失礼した三沢君。その通り、これで理論上は完璧じゃ。これで君たちを、この世界に帰還させられる。ただ次元の裂け目はとても不安定なものであり、失敗の可能性を少しでも抑えるためになるべく迅速に行動してもらいたい』
「はい、博士。よし、テニスコートに行くぞ!」
「ブルーベレー、お前たちもついて来い。俺たちも行くぞ!」
テニスコートに向けて全員が出発する。僕もついていこうとして、もう1度だけ振り返った。またこちらを覗き込んでいた夢想と再び目が合い、どうしていいかわからず咄嗟に親指を立てていた。それを見て一瞬あっけにとられた顔をするも、優しく微笑んで同じくサムズアップで応える夢想。そこで発電システムの調子が一時的に悪くなったらしく、画像が急に乱れて何も見えなくなった。砂嵐状態のテレビのようにザーザーと無意味な音が流れたままの映像に背を向けて、すでにいくらか先行しているメンバーと合流しに向かった。……本当駄目だなあ、僕。へタレとか臆病とか言われても言い返せそうにないや。
『へタレ。臆病。これでいいか、マスター?』
「……そういうのはいらないです」
なんでこの神様からナチュラルに悪口言われなきゃいかんのだ。流石に空気読めてなかったと反省してくれたのか、それ以降向こうからコンタクトは取ってこなかった。
「そんな……あいつらは……!」
「嘘、でしょう……?マルタン、本当にあの封印を……」
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