巻ノ五十五 沼田攻めその九
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「だからな」
「徳川殿もそちらに移られましたか」
「戦は避けられぬ」
既に秀吉は出陣を決めている、それではだ。
「最早どうにもならぬわ」
「それが北条殿はわかっておられぬ」
「残念なことにな」
「ですか、では」
「わかっておるな」
「はい、我等もですな」
幸村は父の言葉に畏まって応えた。
「出陣ですな」
「そうじゃ、そしてな」
「関東に入りますか」
「沼田は行くことはない」
嫡男である信之が守っているこの城はというのだ。
「源三郎が守っておる」
「だからですな」
「そうじゃ、源三郎なら充分じゃ」
「兄上はあの城を守られる」
「そうじゃ、わしは出陣し関東に入るが」
「それがしもまた」
「御主も家臣達を率いて出陣せよ」
幸村もというのだ。
「よいな」
「では早速」
「あの者達も連れて行け」
十勇士達もというのだ。
「よいな」
「畏まりました、では」
「その様にな」
こうしてだった、幸村もまた関東に向けて出陣することになった、彼は己の屋敷に戻るとすぐに居間に入ってだった、彼等を呼んだ。
「皆集まれ」
「はっ」
幸村の言葉と共にだった、十勇士は幸村の前に集った。それは一瞬のことだった。
そしてだ、彼等は幸村にすぐに言って来た。
「それではですな」
「これより出陣ですな」
「関東に向けて」
「左様ですな」
「そうじゃ、拙者も兵達を率いて出陣するが」
それでとだ、幸村は彼等に話した。
「御主達もじゃ」
「ですか、それではです」
「我等殿と共に戦いまする」
「では今より関東に入りましょうぞ」
「この上田から」
「そうする、では拙者はこれより具足に兜を着けてじゃ」
そのうえでというのだ。
「馬に乗るぞ」
「戦の姿ですな」
「では我等はその殿をお護りしてです」
「そのうえで戦います」
「そう致します」
「頼むぞ、御主達は拙者の傍にいて共に戦うかな」
若しくはというのだ。
「忍として働いてもらう」
「ですな、さすれば」
「我等もお供致します」
十勇士達も応える、こうしてだった。
幸村は十勇士達と共に出陣した、彼は赤備えの真田家の具足を着て陣羽織も羽織った。兜も被り二本槍に太刀も持っている。
そして馬に乗りだ、後ろに控える十勇士達に言った。
「兵達にも声をかけた」
「ではですな」
「兵達が集まればですな」
「すぐに城に馳せ参じ」
「そこからですな」
「そうじゃ、父上と共に出陣じゃ」
東国へというのだ。
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