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第五十三話 長旅は退屈なのです。
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帝国歴486年5月20日――。
惑星フェザーン 自治領主府――。

ルビンスキーは秘密裏に設けられた通信室で、遥か彼方にあるとある惑星と極秘通信を行っていた。
『すると、ルビンスキー、汝は今回の和平交渉について、手を出さぬ、そういうのだな?』
声は念を押すかのように強い調子でルビンスキーの耳元に届く。
「御意でございます。」
『ほう?まさかとは思うが、ルビンスキーよ。汝は自分の使命と汝の地位を提供した我々の恩義を忘れようというのではあるまいな?』
「めっそうもございません。両国の和平交渉を見守ることこそ、フェザーンに、いえ、そちら様方にとって真に有益なことであると愚行いたす次第。」
向こうから響いてくる声は不審そうに鼻を鳴らした。
「要は結果ではありませんか。過程を論じることは無益。私がお望みの結果を差し上げれば、わが忠誠がいずこにあるか、おのずと知れる時が来ようというものです。」
『フン、汝の言う「その時」とやらが、遠からずやってくることを期待させてもらっていいのだな?』
「御意・・・。」
恭しく頭を下げたルビンスキーの頭上で、回線が切断される音がした。それでもまだルビンスキーは頭を下げ続けていたが、やがて顔を上げると、平板とした無表情のまま部屋を出た。次の間に出て、ぴったりと出てきた扉を閉め、錠をかけたところで、彼はほうっと息を吐いた。何度行ってもこの得体のしれない嫌悪と悪寒が這い上がってくる会見は、さすがの彼と言えどもこたえるものと見える。
「流石のあなたも、ああいう連中と話すときには、汗をかくのね。」
ドミニクがワイングラスを片手に、テーブルの上に綺麗な脚を組んで座っている。
「如何に鉄の自制心がある人間であろうと、ああいう狂気の輩と対峙するには、それなりの気苦労があるのだ。ドミニク、お前もあの場にいれば、果たして今と同じ言葉を言えるかな?」
「さぁ、どうかしらね。」
肯定するでも否定するでもなく、投げやりなけだるげな調子でドミニクは言う。ルビンスキーは今のようなやり取りをドミニクには話はしないのだが、ドミニクはドミニクで、ルビンスキーが誰と気脈を通じているのか、うすうす知っている様子だった。もっともルビンスキーはそのようなことをドミニクが知ろうが知るまいが、歯牙にもかけていない。
「ふん、まぁいい。ところでドミニク、どうだ?少し旅行をする気はないか?」
「えっ!?」
ドミニクの声からけだるげな調子が消え失せた。
「冗談ではないぞ。フェザーン自治領主として私が帝国と同盟の双方から調停役に指名されたのだ。我がフェザーンは帝国の領内とはいえ自治を宣言し、いずれにも加担していないことを建前としているからな。」
「そのトップたるあなたが調停役とはね。大変な名誉でしょうけれど、嬉しそうではないように見えるわ。」

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