第28話『漁夫の利』
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誰もが安心して暮らせるのだから。
え〜と…「正当防衛」という言葉は…まぁ見逃しておこう。私は今そんな状況だし。
それにしても、この競技に参加するということなら、もう少し画期的な道具は無かったのだろうか。確かに美術部に戦闘向きの道具が有るかと言えばそうでは無いし、もし有ったとしてもきっと使うのを拒みたくなるような物ばかりだろう。危ない物だけは勘弁してほしい。
「魔術部・・・」
私はふと、過去を思い出す。
両親に連れられ行った温泉旅館。そしてそこで不思議な体験をしたことを。
あの時、偶然にも出会った彼が身を挺して私を守ってくれたから、私は今ここに居る。感謝してもし切れないくらいだ。
そもそも私が原因で起きた事態だったのに、彼はさも自分が悪いかの様に私に謝った。謝罪したかったのはこっちの方なのに。いつか彼には何か恩返しないとな・・・。
「ん?」
過去をゆっくりと振り返っていた私の目に、何やら険悪な景色が移る。男子と女子の格闘。遠目ではそれしか確認できなかった。
「喧嘩…」
私はそう感じると、すぐさまその場所へと向かった。
*
炎を拳に纏わせ、俺は眼前の女に殴りかかる。
女を殴ることを批判してくる奴がいようと関係ない。今はこの拳に、俺の全てを乗せる。
「うぉらぁっ!!」
「弱い弱い! 隙あり!」
「んぐ…!」
しかし最大火力で放たれた炎のパンチは、いとも容易くビート板に防がれ、さらに俺の横腹にカウンターの回し蹴りが入る。咄嗟に身をひねったものの、間に合わずほとんど威力を殺せていない。おかげで、変なうめき声を上げてしまった。
「くっ…まだまだぁ!!」
「懲りないねぇ。それじゃ、もう一発お見舞いしてあげる──」
「2人ともストップ!!」
「「へ??」」
不意に横から放たれたその声に、2人の動作はピタリと止まる。一体誰だ? どこかで聴いたような声だが・・・
「2人とも喧嘩はダメ。もっと穏便にしないと」
そう言葉を続けていたのは、『清楚』という肩書きがよく似合いそうな美少女だった。
しかし俺はその顔を見て、何かを思い出す。この女は確か・・・
「どうしたの? 優菜ちゃん」
そうだ、戸部 優菜だ。この前のテストで、学年2位の成績の持ち主。でもって、俺らの合宿の時に偶然出会った人だ。
しかし、何の用なんだ? “穏便に”って・・・?
「戦争反対。平和主義じゃないと」
平和主義だ? どこぞの憲法みたいなこと言いやがって。
そんなに言うなら、そもそも参加しなければいいのに。
「『平和』って言っても優菜ちゃん、これは勝負なんだよ?
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