第11話 初めまして
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顔されると僕だって少しは傷つくんです。そこまで気にすることではないけれど。
「えっと、西木野さんは音楽は好きなんですか?」
「え?何よ急に」
「あ、いやすいません」
「だからなんですぐに謝るのよ」
「いや...すいません」
僕が”音楽”について質問した途端、彼女に纏っている雰囲気が一気に変わった。
この話はもしかするとタブーだったのかもしれない。
「そうね。音楽は好きよ、幼稚園の頃からマm...お母さんのピアノを弾いている背中を見て育ってきたもの」
「今、ママって────」
「そんなこと言ってないわ」
「あ、はいすいません」
「まったく話しそらすようなこと言わないで」
この女の子は家では絶対両親のことを”パパ”、”ママ”と呼んでいるようだ。
でも高校生にもなって人前でその呼び方で呼ぶのは恥ずかしい、だから呼び方を変えようとしているんだけど、昔からそう呼んでいたせいもあって中々苦労している。そんなところかな?
凛も中学時代呼び方を変えることに苦労していたし...
「それで話を戻すけど、将来は音楽に関する仕事がしたいって夢が”あった”わ」
「夢が...”あった”。なんで過去形なんですか?」
「...」
僕の当然の質問に一度視線をそらし、足元の小石をコツンと蹴った後に今度は空を見上げる。
最後に僕の方を向いて...。
「それは、貴方に関係ないことよ」
彼女はそうバッサリ切り捨てた。
その時、僕は察した。
これは。今の話は赤の他人の僕が踏み込んではいけない話だということを。
人は皆、誰にだって秘密はある。花陽にも、凛にも、当然僕にも。
僕や花陽ちゃんや凛ちゃんみたいな関係同士ならまだ気軽に話せるかもしれない。
或いは、恋人同士でも自分の秘密を明かすことだって多分できる。
そこには絶対的な信頼があるから。
僕らのような幼馴染や親友関係然り、恋人然り、夫婦然り。
お互いのことをよく理解できていて相談しても怖くない存在。
”僕が仮に西木野さんの立場だったら”と視点を置き換えて考えてみる。
僕と西木野さんはつい数十分前に知り合ったばかりの関係。
知り合ってここまで来るまでに少なからずとも仲良くはなった...はずだ。うん、そう願いたい。
だけど、所詮そこまで。
まだ、彼女は僕のことを”友達”とまで認識していないだろう。
きっと”知り合い”程度だ。
そんな知り合い以上友達未満の関係相手に自分の隠していた秘密や悩みを素直にほいほい打ち明けることが
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