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小才子アルフ〜悪魔のようなあいつの一生〜
幕間 瓦礫の中に埋もれる戦史
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ツ大尉です」
 そして舌打ちする余裕も惜しいほどの疲労は日付が二十六日目に切り替わり、後任の副官が着任するころには視神経の機能に異常を感じるほどに増大していた。
 亜麻色の髪をした壮年の士官、新たに着任した副官が同盟建国以来の名家の出身であること、ユリアンという名前の息子がいること、同じ子を持つ父親の立場から見てよくできた父親であること、諸々のデータを海馬の底から掬い上げることができたのはキャゼルヌ中佐とミンツ大尉以下数人のスタッフの献身的な努力のおかげで数時間だけだが官舎に戻り入浴と仮眠、着替えをすませることができてからであった──。

 「君は実によくやってくれる、ミンツ大尉」
 「恐れ入ります、閣下」
 紅茶の湯気を細い顎に当て、彼が赴任してきた夜に至る日々を想起しながら、フォークはミンツ大尉の労を労った。家に帰れば二歳の息子の父親である、美青年の大尉は紅茶を淹れる腕前は喫茶店を開業しても繁盛するであろうほどの水準であったが、副官としての事務能力ではキャゼルヌ伯甥には及ばないにせよ十分に高水準の能力を有し、格闘技や射撃といった戦闘能力にも、運転手としての技量にも秀でていた。
 『閣下、『プレミアム・フライデー』のエルロック・シャルメスです。惑星ガンガバードの基地司令官が捕虜に支給される食料品の一部を横流しした件について、コメントをいただけますでしょうか』
 知己である美術商を思わせる黒髪の新聞記者──マス・ガベイジ、巨大な塵と呼ぶにふさわしい下品な報道者が執拗に追跡してきたときの撒き方など、芸術の域に達していた。
 有用な人材は、一人でも多く確保すべきだ。フォークはもう一度決意を反芻した。
 そして、留任の手続きがスムーズに受け入れられるよう別の手続きをミンツ大尉に向って開始した。
 「ところで、先の話になるが、君は前線勤務を希望していたのだったかな」
 「いえ、特に希望はありませんが」
 「特に希望がなければこのまま後方勤務本部の勤務を、私の副官を続けてくれるとありがたい。君とキャゼルヌ大尉がいなければ、私は書類の山に埋もれていただろう」
 「願ってもない話です。喜んでお引き受けいたします」
 チーム・フォークへの勧誘をミンツ大尉が了承するまでに要した時間は、もう一人の新メンバー候補者が首を縦に振るまでに要した時間の半分もかからなかった。

 その日、ミンツ大尉、キャゼルヌ大尉がチーム・フォークへの加入を了承した日から正確に六ヶ月後。
 捕虜交換はつつがなく、滞りなく完了した。
 指向性ゼッフル粒子の開発者でもあるアントン・ヒルマー・フォン・シャフト技術少将の提案を現実化したという三基の移動要塞がイゼルローン要塞の彼方から同盟側宙域にワープアウトし、宿将ミュッケンベルガー上級大将率いる艦隊が整然と布陣を終えるさま
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