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小才子アルフ〜悪魔のようなあいつの一生〜
幕間 瓦礫の中に埋もれる戦史
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そなたたち全員に英雄としての帰還を約束する。そなたたち全員に『戦友の盾』の称号を与え平民は従騎士となし、勇戦敢闘章を授けよう。全ての者は我が新たなる騎士を称えよ』
 「誰が芝居の原稿を書いたのかは知らないが完璧だな。帝国は精兵一千万を補給すると同時に忠臣一億を生み出すことになる。そして我々は士気の衰えた兵一千万を手に入れるわけだ。はっ、最高のクリスマスプレゼントだ」
 ハイネセンのミドルタウン、ジャーナリストたちの溜まり場となっているカフェでネットワーク配信されたビデオメッセージを見たジャーナリストのパトリック・アッテンボローは溜息とともに吐き出した。
 銀河帝国第三十六代皇帝フリードリヒ四世。特に名君でもなく暴君でもない。はずだったのであるが、この変わりようはどうだ。賢夫人の支えを得たか名臣の補佐を得たか、これではどんなに低く見積もっても並の名君を超えているではないか。怪物というにもほどがある。
 『我が宝、我が誇り、誉れ高き我が英雄たちよ。そなたたちに恥じるべきものは何もない。勇者として胸を張って帰って参れ。余は晩餐を整え、新たな寝具を仕度しそなたたちの帰りを待っておる』
 皇帝の言葉を最後まで聞くことなく、パトリックはカフェを出た。
 自由の精神は名君よりも強しと固く信じるパトリックであったが、この皇帝を前にしては絶対の信念を保ち続けられる自信がなかった。
 「まったく、完璧だ。我々がこれに対抗するには、帰還兵にどれだけのクリスマスプレゼントを用意すればいいのか見当もつかん」
 同じころ、後方勤務本部次長であった自分のオフィスで映像を視聴したフォークは、皇帝の姿が消えた画面に嘆息に加えて乾いた拍手を送っていた。フリードリヒ四世のメッセージに脅威を感じたのはフォークも同様であった。だが、彼は知己であるパトリックよりももう少し、不安に襲われずにいることができた。彼は最前線の兵士ではなかったが軍人であり、軍官僚として捕虜交換にも関与する立場にいたからである。民主国家の軍人のプライドが、彼を強固に支えていた。
 「あちらさんが度肝を抜こうってんなら、こっちも唸らせてやるさ。ハイネセン・ホテルのサービスの質の高さでな」
 「コンシェルジェの役は任せた。あてにしているよ」
 「いざとなったら、甥っ子のアレックスにもベルボーイを手伝わせるさ」
 「帳簿係が足りなくなったら、うちのアンドリューも貸すよ」
 部下であり年来の友人でもあるマルセル・キャゼルヌ中佐の、対帝国戦が始まったごく始めの頃の帝国軍捕虜たちのジョークまで持ち出した皮肉にジョークで応じるゆとりさえ、存在したのである。
 だが、捕虜交換が正式に決定され、当初一千万人とされていた人数が「皇帝の恩寵によって」五百万人増やされ千五百万人となりタカ派の政治家や主要なメディアまでもが帝国
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