十六話:遊園地2
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瞳が開かれた時、彼の瞳には記憶を全て失った人間とは思えない、強い輝きが灯っていた。
「―――僕が君を愛していることだけは分かる」
彼女の名前は覚えていない。肌の感触も、声も、顔も全て消えた。
だとしても、一人の女性を愛しているという事実だけは決して忘れない。
己の存在をも消失させる“名無しの森”。
名前を奪い、記憶を奪い取るその力も―――彼の愛を奪い取るには不十分であった。
「余は君を守りたい。戦う理由などそれだけで十分だ」
「……■■■…様」
自然とシータの頬を涙が伝う。しかし、そのまま惚けているわけにはいかない。
彼の想いを無駄にしないように立ち上がり背を向けて挫いた足を引きずりながらも歩き出す。
『君も早く!』
「しかし…私は……」
ぐだ男はジャンヌも続くように促す。
だが、記憶を無くそうとも彼女の心は聖者のそれであった。
自身のために他人を犠牲にすることなどとてもではないができない。
そんな彼女に同じように記憶を失いながらぐだ男は声をかける。
『ここは男に任せて』
「私も手伝います。■■■■達を残していくわけにはいきません」
『あの子を助けてあげて。足を挫いているから長くは歩けない』
「ですが―――」
頑固な性格は変わらないジャンヌはなおも食い下がろうとするが手で口を塞がれる。
驚くジャンヌをよそにぐだ男はニッコリと笑ってみせる。
『俺も男だからさ―――好きな女の子の前ではカッコつけたいんだ』
「……え?」
『ほら、いいからもう行って』
記憶がないからこそ素直に出た好きという言葉にジャンヌは意表を突かれる。
ぐだ男はチャンスとばかりにジャンヌを押して出口に強制的に向かわせる。
そして、ジャバウォックとギリギリの戦いを繰り広げているラーマの下に援護に向かう。
「…! 彼女を安全な場所まで運んだら戻ってきますからね!」
『頑固だなぁ』
なおも自分達を助けることを諦めないジャンヌに苦笑いしながらぐだ男はラーマにサポートを行う。
『倒せそう?』
「……大技を叩き込めれば何とかなるやもしれん。普通の攻撃では傷一つつかん」
『威力が上がるようにサポートするよ』
「フ、そなたも誰やも分からんが何故だか信用できる気がするな」
ラーマの傷を癒しながら作戦を立てる。
時間が経てば経つほどに自身の存在が薄れていく。
本能でそれを理解したために二人は言葉を交わすこともなく短期決戦を決める。
「チャンスは一回だけだ」
『全てを賭けるよ』
「良い心意気だ。行くぞ、名も分からぬ友よ」
短く最後の言葉を交わし襲い掛かってくるジャバウォックへ立ち向かっていく。
ラーマが
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