十六話:遊園地2
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ん…だ? 余は誰だ…それに余が愛するのは■■■」
『俺は…それに…君達は…誰だ…?』
「思い出せない。私の……名前は■■■■」
「忘れたくないのに…記憶が……■■■様…」
“名無しの森”は文字通り人の名前を奪い取る。
そして、それを皮切りに全ての記憶を奪っていき最後には存在を消滅させる。
四人は自身の存在すら思い出すことができずに立ち尽くす。
しかし、記憶がなくとも意思はある。
『早くこの森を抜けだすんだ!』
ぐだ男はもはや誰かも思い出せなくなった者達に逃げるように叫ぶ。
記憶なくとも分かることはある。目の前の存在から逃げなければならないという本能だ。
これはナーサリーライムの言う通りに鬼ごっこなのだ。
森を抜け切る前に捕まればアウト、捕まる前に森を抜ければセーフ。
ルールは単純だ。ただ、決して逃げられないことを考えなければだが。
「さあ、鬼ごっこの始まりよ」
真っすぐに出口へと駆け出していく四人。
だが、直線的な道のりで人間が化物よりも速く動けるはずがない。
大地を震わせる咆哮を上げながら怪物は四人へと襲い掛かってくる。
「キャッ!? 足が木の根に…!」
「ッ! 早く私の手を取ってください!」
後少しで出口というところでシータが木の根で足をくじき倒れる。
人の手で手入れされていない森は歩くだけでも一苦労だ。
それを歩いてきた経験を失った状態で駆け抜けるなど土台無理な話だ。
慌てて隣を走っていたジャンヌが助け起こそうとするが間に合わない。
寧ろ、自身までもがジャバウォックの牙が届く範囲に取り残されてしまう。
ジャバウォックは何の戸惑いもなく身動きの取れない二人に向かい底の見えない口を開く。
しかし―――
「させるかぁぁッ! ■■■!!」
『逃げて、■■■■!!』
間一髪のところでラーマが手にした剣でジャバウォックを斬りつけ、ぐだ男がガンドを放つ。
ジャバウォックは僅かに仰け反るがダメージを受けた様子には見えない。
しかし、それでも彼女達を生かすには十分であった。
「あれは我らが食い止める! その間にそなたらは森を抜けるのだ!」
「そんな…どうして? 何も思い出せないのに、私はあなたが誰かも分からないのに…」
背を向け逃げるように促すラーマにシータは戸惑う。
彼女の記憶は森に奪われた。目の前の彼が誰かなど思い出せない。
それどころか自分が誰かも覚えていない。
それはラーマも同じであった。
「実のところ、余も分からん。そなたが誰かも、自分が誰かも、分からん。だがな―――」
存在が薄れていく苦しみもものともせずにラーマは静かに目を瞑り刃を握る。
そして、再び
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