第10話 家主のいない衛宮邸
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た。
「っっ!」
テレビの画面が付いたままだと言うのに、ヒカルはベットにうつ伏せ状態で思い切り突っ込んで行った。そして――――。
「・・・・・・っ・・・ヒック・・・・・・ック・・・・・・」
泣いていた。かすれた泣き声もたまに聞こえて来る。
この少女の泣いている理由は、自殺した少女欅美奈とは小学低学年からの親友だったのだ。
だがそんな彼女も自分の手の届かない場所で、最悪の選択をした。いや、取らざる負えないほどまで追い込まれたのだ。
恐らく――――いや、確実に自分が今こうしてこの場に居る原因を作った怨敵たちの手によって。
しかしどれだけ憤慨しようと、自分には何の力も無いと自覚している少女は、これまでと同じく嘆きながら絶望していくしかなかった。
−Interlude−
深夜。
日本のとある人気のない海岸――――否、その付近を光学迷彩で周囲と同じ景色に偽装した宙を浮かび続ける巨大な“何か”から放たれる謎の電波により、周囲に居る人々の脳に干渉してこの周辺に近づかせないようにしているのだ。言うなれば、認識阻害の魔術結界の科学製版である。
しかしこれに抵抗するには、何故か魔術回路を持つ物や電波を発している巨大な“何か”の持ち主の同類である。或いは同レベルの技術力により、同じ電波で中和させて無効にする事の出来る装置が必要だ。
それは兎も角、その巨大な“何か”の一部が自動式のドアのように開かれて、中から誰かが出てきた。
その者は海岸の浜辺に足を付けてから周囲を見渡す。
「この国は平和そのものだと言うのに、相変わらず業に満ち満ちているな」
「仕方がないだろう。現代社会は全世界レベルで病んでいる。だが言うなら、この国は全世界から見てもトップクラスだろう」
最初に海岸に降り立った者の背後から、別の人物――――この巨大な“何か”の主が庇うような発言をした。
しかし先に海岸に降り立った者は肩を竦める。
「別に責めている訳じゃ無い。寧ろ褒めてると言ってもいい。今この場所に立っているだけでも、あちこちから怨嗟の念が漂ってきているのが分かるしな。この状況を放置するとは、余程この国の民衆らは豪の者達で溢れているのだろう」
「・・・・・・この国の原住民の多くは良くも悪くも事なかれ主義だが、そもそも一般人にはこの光景を知覚できないのだ。どうしようもないと言えるだろう」
「繰り返すが、これでも褒めている。これだけの怨嗟が集積しているのに、よくも無関心で放置できるものだな、と。最悪無政府状態になっても可笑しくないからな」
「・・・・・・・・・」
如何考えても褒め言葉では無いし、皮肉にしか聞こえない。それに先程言った様に、この国の事なかれ主義の性質が大きく関係して
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