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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十一話 開幕ベルは鳴った
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いて生み出す」
「……」

「三十年、三十年あればできるはずだ。三十年後には保護国とした反乱軍を併合する。あと三十年で宇宙を統一し、戦争を無くせる……。」
「……」

皆声を失っていた、相槌も打てずにいる。どんな顔で聞いていいのかも分からなかった。夢ではない、空想でもない、エーリッヒには真実三十年で宇宙を統一し平和な世界を作るだけの確信があるのだろう。ただそれを阻もうとする人間たちがいる。

「見られますよ、三十年後の世界」
「リューネブルク中将……」
「我々が閣下を守ります。閣下に死なれてはこれから先がつまらなくなりますからな。大丈夫、必ず見られます」

冗談めかした言葉だったが口調は真面目なものだった。あるいは冗談で紛らわせようとして出来なかったのかもしれない。エーリッヒもそう思ったのだろう。冗談めかしてリューネブルク中将に答えた。

「私は中将を楽しませるために生きているわけではありませんよ」
「分かっています。小官が勝手に楽しんでいるだけです。それに未だ借りを返していません。死なれては困ります」

“借り? また古い話を”、“古くはありません、高々二年です” エーリッヒとリューネブルク中将が話している。エーリッヒは何処か困ったように、リューネブルク中将は真剣に。

「リューネブルク中将の言うとおりです。まだ死なれては困ります。そうではありませんか、メックリンガー提督」
「そのとおりです、一緒に三十年後の世界を見ましょう。必ず見られます」

俺とメックリンガー提督が口々に励ますのが嬉しかったのだろう。エーリッヒは笑顔を浮かべた。
「そうですね、一緒に見ましょう。でもそのためには先ず決裁をしないといけませんね」



帝国暦 487年 11月22日   オーディン 宇宙艦隊司令部  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


殺風景な部屋だな、ベッドに横になりながら俺はそう思った。十月十五日に勅令が発布されて以後、俺は宇宙艦隊司令部に仮の住居を用意し寝起きをしている。官舎では十分な安全を確保できないとキスリングに言われたのだ。まあ確かに宇宙艦隊司令部への行き帰り、それに官舎への攻撃等を考えるとキスリングの言う通りだ。

仮の住居だが、これは宇宙艦隊司令部の地下に有る。理由は簡単、外部から攻撃を受けないためだ。そのため俺は日によっては一度も宇宙艦隊司令部を出る事の無い日もあるし、お天道様を見ない日もある。まるでモグラにでもなった気分だ。安全は安全だがストレスは溜まる。

特に寝るときが苦痛だ。窓の無い部屋、太陽の光の入らない部屋、おまけに天井が低く、圧迫感を感じさせる。目覚めても時計を見なければ朝なのか夜なのか分からない、全くもってうんざりする。

ヤン・ウェンリーがイゼルローン要塞に着任した
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