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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
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たば》ねてリボンで()めた後ろ姿があった。
 名誉除外(アウトナンバー)の文献の一部にある髪型の名称(めいしょう)らしい。
 うん、中々可愛い。

「ん、いいじゃん。 じゃあ、これでいくか」
「はい。 次に、今日のお()し物は用意出来ております」

 そしてこの優秀な昔馴染(むかしなじ)みは(すで)に次の用意しており、朝の準備は(とどこお)りなく進んだ。



―――。


 (ひざ)を隠す程度の(たけ)のワンピースドレスを身に(まと)い、胴衣(ボディス)コートを羽織(はお)ってウェストを引き締まらせ、朝支度完了。
 装飾(そうしょく)も宝石は着けずに、このまま城の中を我が物顔で闊歩(かっぽ)する。

 デトワーズ皇国の姫陛下としては質素(しっそ)な格好ではある。
 しかし素材自体は上等で、動きやすさを重視したこの服装は、ゴテゴテやヒラヒラよりずっと気分が良い。
 後ろで(つつ)ましく付いてくるミーア姉ちゃんはもちろんの事、他の奴らも文句は言ってこない。


 ―――鬱陶(うっとう)しいくらい文句言ってくるような奴がいたら、ぶん殴るけどな。

「姫様、今日のご予定はどうなさいますか?」
「ん」

 後ろを付いてくるミーア姉ちゃんが()いかけて来た。
 これから朝メシを食うのだけれど、その後は政務(せいむ)やら何やらとやる事は多い。

 だが…気分ではなかった。

「面倒臭い。 今日は気晴らしに出掛けてくる」

 なので、すっぽかす事にする。
 こちらの意図を察してくれたミーア姉ちゃんは即答した。

「では、お食事の方は?」
「朝メシは外で食うぜ。 何か包んでくれ」
「かしこまりました」

 仕事は多いだろうが、そんなの後回しにしても国は滅びない。
 むしろ俺の気分が滅入(めい)ってやる気がどん底に落ち込んで、支障(ししょう)をきたす方が深刻だ。
 ムシャクシャして()さ晴らしにモノをぶっ壊しまくりたくなる。 後悔もしないだろう。

 これは国の安定のために必要な措置(そち)、いわば心の洗濯ってやつだ。



 とりあえずどこまで行くかな……。

 デトワーズ皇国は山と海に囲まれた小国。
 俺の自慢の国ではあるが、小国らしくその国土は狭い。
 馬よりは速い俺の足なら、デトワーズの国土の(はし)まで往復で半日でいける。

「……よしっ、エンリコのおっさんの所のファーン領まで行くか」

 皇国は俺の庭のようなものだ。
 隣領にあるデトワーズ貴族であるエンリコ・ヴェルター・ファーン伯爵の所へ散歩気分で向かうのだった。


 ―――先触れ? いるか、ンなもん。



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