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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
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 ―――これは、レヴァンテン・マーチンがエルザ・ミヒャエラ・フォン・デトワーズ姫と出会うほんの少し前の話。



「……さま……め様………エルザ姫様。 起きてください」

 聞き()れた声に(さそ)われて目が覚めた。
 蝋燭(ろうそく)に火が灯るように意識が浮き上がると、まどろみを吹き飛ばして五感が(よみがえ)ってきた。

「んー、おはようミーア姉ちゃん」
「はい、おはようございます。 エルザ姫様」

 視界に(とら)えずとも、声をかけると()れ親しんだ返事がかえってきた。
 俺の専属(せんぞく)メイドであるミーア姉ちゃんがいつものように起こしに来てくれた。

 目を開けて視線を向ければ、朝一番だと言うのに、(そな)えられたかのようにメイド服に身を(つつ)んだミーア姉ちゃんが(たたず)んでいる。
 昔馴染(むかしなじ)みであるミーア姉ちゃんは、専属(せんぞく)のメイドとして教育と訓練を(ほどこ)されて俺に合わせているから、おはようからおやすみまで完璧だ。

「エルザ姫様、髪を(ゆわ)えます」
「ん、起きるぜ」

 起きてすぐに、この体は寝起きのだるさなど関係なく快活(かいかつ)に動く。
 ベッドから体を起こし、軽やかに降りるとすぐ隣にある鏡台(きょうだい)の所へと腰を下ろした。
 すぐにメイドのミーア姉ちゃんが後ろに回って、寝起きで乱れた髪をブラシで()かし始めた。

 ん〜、やっぱり朝にこうして髪を()かしてくれるのが気持ちいいな。

「今日はどのような髪型にしますか?」

 ミーア姉ちゃんがそう()いかけてくるが、そこに意味はあまりない。
 なぜなら大体決まって俺はこう言うからだ。

「何でもいい」
「はい。 ではそのように」

 ミーア姉ちゃんが()いかける、それを俺がテキトーに答える、そしてミーア姉ちゃんのお任せで髪を(ととの)えさせる。

 昔からの習慣(しゅうかん)で、朝のお約束のようなものだから、やる必要がなくてもこのやりとりを毎朝()り返す。


 欠伸(あくび)を噛み殺している間に、香油(こうゆ)馴染(なじ)ませた髪があっと言う間に(ゆわ)えられた。
 鏡台(きょうだい)から見た分にはわからないが、背中まで伸ばした髪がまとまっていくらか軽くなった気がした。

 鏡越(かがみご)しの視界で、後ろからミーア姉ちゃんが鏡を(かか)げていて、そこには俺の姿が(うつ)し出されていた。

「本日は、()じりリボン()めハーフアップで御座います」

 鏡に(うつ)った俺の後ろ髪には、半分ほどそのままに、生え下がり辺りを両側から|束《
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