機動戦艦ナデシコ
1440話
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いたが?」
「知らない。消えた」
消えた、か。逃げ出すにしても、この子供は賊軍にとって間違いなく有益な存在なんだから、置いて行く事は……いや、待て。それはつまりこの子供を置いて行かなければならなかったって事か?
「最後の命令は?」
「可能な限り足止め」
「……そうか」
やっぱりな。
多分この基地に存在していた賊軍のお偉いさんは既に逃げているのだろう。
その時間を稼ぐためにこの子供に戦車を……待て。それだけか? 本当にそれだけで終わるのか? もしこの場合、俺だったら……ちっ!
「来い!」
念動力による危険感知はない。
だがそれでも、もしかしたら奴等は最悪の事を考えている可能性が十分にあった。
そう、ちょうど俺達が攻めてくるのを待っているかのようなこのタイミングで。
「あ」
軽く抱き上げると、その子供は全く重さを感じさせない。
いや、重さはあるんだろうが、間違いなく平均的な子供の重さよりは軽い。
それこそ、軽過ぎると表現してもいいくらいに。
つまり、この子供はそれだけ栄養を与えられていなかったということだろう。満足に食事が出来ない……と思ったが、脳裏を以前のルリの姿が過ぎる。
ルリも以前は食事に対して楽しみを見出していなかった。栄養補給という意味しかなく、ハンバーガーといった簡単に食べられる物と栄養剤の類で適当に済ませていたのだ。
そう考えれば、もしかしたらこの子供もそう変わらないのかもしれないな。
微かに……本当に微かにだが目を見開いている子供を抱きかかえ、俺の身体は影へと沈んでいく。
普通なら初めて影に沈む感触に驚くのだろうが、幸いと言うべきかこの子供は今は俺が抱きかかえている。
影に沈み込む独特の感触を味わう事なく……ただ、その子供は何故かじっと俺の方へと視線を向けていた。
「……あら、お帰り。予想していたよりも随分と早かったわね。てっきり向こうの基地をどうにかするんだとばかり思ってたけど」
シロガネのブリッジに子供を抱きかかえながら影のゲートから出て来た俺を見ても、レモンは特に驚いた様子を見せずにそう告げる。
まぁ、レモンは何度も影のゲートを見ているし、体験している。そこまで驚くような事ではないのだろう。
ともあれ、俺はそんなレモンの言葉を聞き流し、ナタルへと指示を出す。
「ナタル、防御を固めろ。カトンボとヤンマも一旦退かせろ。恐らくこれは罠だ」
ナタルの優秀なところは、命令を即座に行動に移せるところだ。
勿論以前ナタルの上司――正確には違うが――だったアズラエルのように目茶苦茶な命令であれば話は別だが、今回のような命令の場合は話が違う。
そんなナタルの命令は円と美砂からヤンマとカトンボ……正
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