第三章
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「騎兵隊も」
「はい、そうです」
「騎兵隊もです」
「陛下のお考えに添ったものです」
「こうしたものにしています」
「果たしてどうなるか」
外交官は彼の想像の範疇を遥かに越えたスウェーデン軍を見つつ言った。
「わかりませんが」
「陛下が言われていることです」
士官達の返事はここでも変わらなかった。
「なら問題はありません」
「勝てると」
「はい、この大砲と歩兵、そして騎兵で」
その彼等でというのだ。
「勝てます」
「騎兵もです」
外交官は彼の国フランスの騎兵隊から考えて言った、フランスは平地が多く広大な農地を持っているので馬も育てやすく騎兵隊もいい馬を持っていて強いのだ。
「今のカラコールとはです」
「戦術を変えています」
「また別です」
「そうですね」
所謂車懸りだ、騎乗して撃つ為の短い銃を持った騎兵が横に二十人程度の単位で並び撃ち最後列に下がる、そして後列が同じ様に撃ちまた下がる。それを繰り返すのだ。
「それをせずに」
「こうして戦います」
「陛下が言われる様にです」
「そうします」
「そうですか、では」
その話を聞いてまた言った外交官だった。
「王の言われるまま」
「訓練をして戦います」
「そして勝ちます」
「どうした敵にもです」
「王の言われるまま」
こう言うのだった、スウェーデン軍の士官達は。その彼等と話をしてだった。
外交官はフランスに戻った時にだ、フランス王と共に国政を担っている重臣達にスウェーデンで見たことを話した。
「思いも寄らぬ軍の編成で戦術ですが」
「それでもか」
「スウェーデン王への忠誠は絶対」
「その信頼も」
「それ故に」
「はい、その忠誠と信頼は驚くべきものです」
まさにというのだ。
「ですから」
「その編成と戦術がどう動くかわからないが」
「スウェーデン軍は揺るがない」
「そうなのだな」
「そのことは間違いないです」
こう話すのだった。
「ですから結びつきを深めることもです」
「いいか」
「そうなのか」
「私はそう思います」
「わかった」
その話を聞いてだった、重臣達の中でもとりわけ立派な緋色の法衣、枢機卿のそれを着た鋭い目と整えられた髭を持つ男が言った。宰相のリシュリューだ。
リシュリューは外交官にだ、強い声で言った。
「元々スウェーデンとの結びつきは深めるつもりだった」
「神聖ローマに対する為に」
「そうだ、ハプスブルグ家にな」
神聖ローマ皇帝家でありスペイン王家でもある、フランス王家であるヴァロワ家にとっては不倶戴天の敵である。
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