第五章
[8]前話
「これでね」
「ええ、だからもう」
「どんな相手でもね」
「人の不幸を笑うべきじゃないわね」
「そうね、相手じゃなくて自分に返る言葉だから」
「絶対にね」
こう話すのだった、それでだった。
あらためてだ、他の同僚達も言った。
「こうしたことはね」
「本当にしたら駄目ね」
「他人の不幸を笑うことは」
「例えどんな相手でも」
「そうね」
また言ったベルナデッテだった。
「私も気をつけないとね」
「さもないとね」
「自分に返ってくるから」
「それじゃあね」
「言わないことね」
「言ったらね」
その時点で、というのだ。
「もうね」
「自分に返るものだから」
「しないに限るわね」
「そうしたことを言うよりも」
「いいことを言った方がいいわね」
「全くよね、リゴレットにならない為にも」
ベルナデッテはあえてだ、目の前にいるミレッラのことを気遣って歌劇の主人公の名前を出すことにして実際に出した。
「言わないことね」
「それよりもいいことを言う」
「その方がずっといいわね」
「それが自分の為になるし」
「それならね」
「そうね、私もよくわかったわ」
ミレッラもベッドの中で言った、自分の傷を見つつ。
「悪いことは言わないことよ」
「自分に返ってくるからね」
「だからね」
「もう言わないのね」
「そうするわ」
「リゴレットで言われていたことは本当のことだったのよ」
ベルナデッテはあらためてわかった。
「人を嘲笑うな」
「その不幸をね」
「例えどんな相手でも何があっても」
「その言葉は相手ではなく自分に返ってくる」
相手が言う言わないに関わらずだ。
「そういうものだったのよ」
「そうね、もう言わないわ」
ミレッラはまた言った。
「二度とね」
「そうあるべきね」
あらためてだ、ベルナデッテも言った。彼女は自分自身には起きなかったが実際に目に見てわかった。呪いの言葉、それは本当にあるということを。
呪いの言葉 完
2016・4・15
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